ー 私も思い当たるふしがあります。思い出に残る学生もたくさんいましたか。
遠藤:そうですね、ある年の最後の多読授業のときのことが忘れられません。ある学生が帰り際、「先生、今までありがとうございました! 図書館にもありがとうございました!」と野球少年のように深々と図書室におじぎをしたんです。
ー へえ! 図書室や多読にそれだけお世話になったという気持ちの表れなんでしょうね。
遠藤:もう一人は『にほんごで よむ 仙台・宮城』シリーズの「牛タン」を読んだ学生です。食べたことがなかった牛タンを、本を読んだ後に実際に食べに行ったと話してくれたんです。その時、多読が現実の行動にも影響するんだなあと実感しました。
ー ええ、食べに行きたくなりますよ。お腹空いてきました(笑)。そうそう、『にほんごで よむ』シリーズのお話もぜひ伺いたかったんです。学校がある仙台や宮城県に特化した読み物シリーズなんですよね。
遠藤:あれは、実は2011年の震災復興の一環で作ったんです。負の面だけではない東北を発信したかったんですよ。
ー なるほど、2018年に『にほんごで よむ 熊本』も出版なさっていますが、震災復興ということでつながっていくわけですね。熊本の地震があったのが、2016年でしたよね。