この教材、どう使う?『BJTビジネス日本語能力テスト 模試と対策』実践的活用法

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――この教材、どうやって授業で使えばいいんだろう?

――もっと学習者の役に立つ活用法が知りたい!

この連載では、このような日本語教師の声にお応えすべく、教材の実践的な活用事例をご紹介していきます。

今回ご紹介するのは『BJTビジネス日本語能力テスト 模試と対策』(著者・発行:キャプラン株式会社、発売:アスク)。

BJT対策授業をどのように進めたらよいか悩んでいる先生方におすすめの教材です。

BJT(ビジネス日本語能力テスト)ってどんな試験?

BJT(ビジネス日本語能力テスト)は、ビジネスコミュニケーションにおける日本語能力を図るテストです。日本語能力試験(JLPT)のように合格/不合格を判定するテストではなく、受験結果に応じてJ5~J1+の6段階の認定が与えられます。

文化外国語専門学校の授業をのぞいてみよう

この教材を使っているのは、東京都渋谷区にある文化外国語専門学校。文化外国語専門学校は、1980年4月に開校し、毎年世界20か国以上の留学生を受け入れています。ファッションで有名な学校法人文化学園の学校であることから、ファッションに興味のある学生が多く在籍しているとのことです。

日本語通訳ビジネス科では、
「在籍中にBJTのJ1レベルを取得する」
という目標を掲げて、学生が日々学んでいます。

お邪魔したのは、BJT対策クラス。26名の学生を2名の先生が指導していました。

(語彙のディクテーションクイズに取り組む学生たち)

ビジネス語彙を確実に身につける

1コマ50分の授業は、まず語彙のディクテーションクイズから始まります。このクラスでは、語彙クイズの1週間前に予習プリントを配布し、その内容からクイズが出されるそうです。授業担当の先生方によると、語彙クイズを通して、早く語彙に慣れることが狙い、とのことです。

ビジネス語彙を含む文が20文書かれていて、ところどころ空欄があります。先生が例文を読み上げるのを聞いて、空欄に正しい語を入れていきます。

一部の漢字はイタリックになっていますが、これは漢字の読みを答えるところ。先生の読み上げを正しく聞いて、正しい読み方を書いていきます。

ディクテーションが終わったら答えの確認。先生がプロジェクターに正解を映し、学生はそれを見て自分で丸を付けていきます。ただの「丸つけ」で終わらず、学生が語彙を正確に習得できるよう、先生方は注意すべきポイントを明確にして説明していらっしゃいました。

「耐久性」とはどういう意味ですか?

「競合店」の読みに気をつけて。「きょうごうてん」、「う」が2つありますよ。

「クレーム対応」の「ー」の位置、間違いやすいですよ。

「時間を設ける」は「そのための時間を作る」という意味。「質疑応答の時間を設ける」等の形でよく使いますよ。

ビジネス語彙の使われ方を理解する

ディクテーションが終わったら、教科書の聴解問題を解いていきます。日本人でも集中していないと聞き逃してしまいそうな問題も、学生は正確に答えていきます。通訳者・翻訳者を志す学生のレベルの高さを感じます。

(『BJT ビジネス日本語能力テスト 模試と対策』より 聴解問題のサンプル)

問題を解き終えた後、先生はまず「わからなかった言葉はありますか?」と学生に問いかけます。学生から挙がったのは、「総務」「(席の)島」「回覧」「○○食品さん」「苦情が多く寄せられる」「ぎりぎりの線」「施主」「信頼関係にひびが入る」など、たしかに日常生活ではあまり使わないけれど、ビジネス場面で頻繁に使われる語彙。

「(席の)島」を説明するのに、先生は日本企業のオフィスのレイアウト写真を見せて、「うちの島」「あっちの島」等の表現を紹介していらっしゃいました。

「○○食品さん」のように会社名に「さん」を使うのも、ビジネス場面ならでは。これを知らなければ、人の名前として聞き取ってしまうかもしれません。

効果的なBJT対策とは

初級の語彙でも、ビジネス場面では特殊な意味で使われることも多くあり、それらを的確に理解し、場面に応じて使い分けられるようになることが、BJT対策のカギなのだとわかりました。また、日本の企業では当たり前になっている文化や行動様式を理解することも、BJT対策として必須なのだと感じました。

BJTはコンピューターを用いた試験ですので、好きなときにいつでも受験ができますし、結果もその日にわかります(正式な証明書は後日発行されます)。他の試験のように試験日を待ったり、結果が届くまで不安な気持ちで待ち続けたりすることもありません。そのため、日本企業に就職したい方はもちろん、日本語のスコアアップを狙う方にもおすすめです。

「でも、BJTの内容は難しいからまだできない…」という方は

まずは『わかるビジネス日本語 新装版―BJTビジネス日本語能力テスト入門』から始めてみることをおすすめします。こちらはJ4レベル(下から2つ目)を目指す人向けに作られた本なので、初級レベルの方でも安心して学習できます。

令和4年度文化庁国語科の調べによると、日本語学校卒業後、進学せずに就職する留学生がここ10年間で8倍に増えたそうです。そのため、日本語学校においてもビジネス日本語を希望する留学生が増えることが予想されます。これまでは、「日本語学校→大学・大学院・専門学校→就職」という進路の学生がほとんどでしたが、その流れも今後変わっていくかもしれません。

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