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    【連載】センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!?〈毎月第3金曜日更新〉

    最終回 大学院進学を悩むコーハイ

    みなさん、こんにちは。ひろこです。
    これまでは私がインタビューしてきましたが、今回は、これから受験を考える未来のコーハイさんにインタビューされてきました!

     

    《コーハイ》なつき氏 日本語専攻の大学を卒業後、イギリスで日本語教育プログラム(Postgraduate Diploma in Teaching Japanese as a Foreign Language)を修了。帰国後、日本語教師として幅広く活躍中。

     


    《聞き手》中山裕子(なかやま・ひろこ) 大学卒業後、旅行会社の社員を経て日本語教師に。国内の日本語学校や中東のヨルダンで日本語を教えてきた。2017年4月から大学院に進学。でも大学院って何をすればいいのか、わからない! そうだ、先輩方に聞いてみよう!

     

     

     


    大学院は行くべき?


     

    なつき 今日はお忙しいところありがとうございます。

    ひろこ それいつも私が言われているので、ちょっと新鮮。

    なつき あ、そうですよね。

    ひろこ よろしくお願いします。いま、日本語教師の仕事をされているんですよね。

    なつき はい。もともと学部卒業したときから修士のことは考えてはいたんですけど、いったん現場に出ようと思って日本語教師を始めたんです。でも、何年か経って、論文を読む時間もなくなるし、研究から離れていってしまって……。

    ひろこ わかります。なかなか時間なくなりますよね。現実にやらなきゃいけないことがいろいろあるし。

    なつき そんな状態なので修士はまだ先かなと思ったんですが、これから海外に出たいと思ったときにやはり修士は持っていたほうがいいと思って……。

    ひろこ そうですか。海外の大学への就職っていまけっこう大変だから、修士を持っているからといって働けるわけじゃない、博士がないとって聞きますが……。

    なつき そうなんですよね。

    ひろこ でも修士がないと博士にも進めないので、始めるなら早いほうがいいっていうのは1つの考えですよね。

    なつき ひろこさんはどうして修士に行こうと思ったんですか。

    ひろこ 私も日本語教師になったときに修士いいなと思っていたし、特に海外から帰ってからはかなり悩んだんですけど、生活のこともあるしもっといろんなことを知りたいなと思って働くほうを選びました。でも学会に行ったときにすごく楽しいなと思って、もっと詳しくなりたいし発表もしてみたいなぁ、と。そのぐらいの気持ちで私は受験してしまいました。

    なつき 私もこれがやりたいっていうのはないんですけど、働いているうちにもっと詳しく知りたいとか学術的に知りたいっていう気持ちになってきて……。

    ひろこ もともと学部のときから日本語専攻だったんですよね。

    なつき はい。

    ひろこ だったら、現場に出て勉強したことと現実にちょっと差があるなあと思いましたか?

    なつき うーん、そうですね、生かせることももちろんあるんですが、それだけじゃないというか……。

    ひろこ そうなんですよね。だからこそ、私は大学院に行くまでに日本語を教える経験をしていてよかったなと思いました。日本語を教える現場を知っていると、理論的なことを勉強したときにどう役立てたらいいのか、想像しやすいんで。それに、いいなと思ったり新しい取り組みを知ったときに自分でもやってみることもできるし。

    なつき 確かに、得たことを生かしやすい環境ではありますね。

    ひろこ 研究の対象も見つけやすいと思います。実際に日本語を教えていたり日本語を勉強している人たちを見たりしていて、ここをこうしたらもっといいんじゃないかな、とか、こういうことしてみたいなっていう興味からだんだん高まっていくこともありますし。

    なつき そうですね。いま、いろんなことに興味があって、1つに絞れないんですよね……

     

     


    大学院の選び方


     

    なつき ひろこさんはどうやって大学を探したんですか。

    ひろこ えーっと、それを聞かれると大変申し訳ないんですが……。

    なつき え?

    ひろこ 偉そうなことを言ってきましたが、私が大学院に行ったのって流れなんです。日本語教師の友達が大学院の受験準備をずっとしていて、その子に誘われて一緒に説明会に行って、彼女が一緒に受験しようよ!って誘ってくれたから受験したんです……。

    なつき じゃあ、そのお友達も一緒に?

    ひろこ 彼女は別の大学院に行ったんですけど、一応同期ですね。

    なつき そういうこともあるんですね。

    ひろこ もちろん、それまでに学会に行ったり本を読んだりして研究したいなと思えることはあったし、説明会で大学の雰囲気も気に入ったし、お話しした教授がすごく面白い方だしこの方のゼミに入りたい!って思ったってのもあるんですけど……。

    なつき その「ゼミに入りたい!」って思った理由は何だったんですか。

    ひろこ 1つは統計を勉強できるゼミだったってことと、その教授が、のちの指導教官になる方なんですけど、研究テーマについて相談したら「自分で考えて」っておっしゃって、それもそうだなと妙に納得してしまって。自分で考えるためにも大学院に行くのはいいなと思いました。

    なつき 統計って大事だって聞くんですけどよくわからないんですよね。

    ひろこ そうそう。だからゼミで勉強できるならいいじゃん!と思ったんですけど、結局いまも正直よくわからず勉強中です。教えてもらうだけだとわからないので、実際に自分で実験データを持ってきて計算してみて、何となくこんな感じなのかなってわかる程度なので、まだまだ……。

    なつき 先は長そうですね。

    ひろこ そうなんですよ。大学によって違うのかもしれませんが、インプットばかりじゃなくてアウトプットや学生同士の学び合いみたいなところがあるので、自分で本を読んだり論文を読んだりしないといけないことが多いです。

    なつき 他に説明会に行ってよかったことってありますか。

    ひろこ 実際に大学のなかが見られるので「あ、こんな場所で勉強するのか」とかいうのがわかったし、雰囲気とか大きさですね。それに先生方もいらっしゃるので直接お話もできたし、私が行ったときは修士1年の人たちもスタッフとして参加していたので、先輩のお話も聞くことができました。

    なつき そうなんですね。

    ひろこ 多分6月とか7月にやると思うので時間を作れたら行ってみてください。

    なつき はい!

    ひろこ どんな先生がいるかって大事だと思います。自分が研究したいこととぴったりの先生はいないと思うんですけど、近いことをやっている先生がいないと論文を書くまでがけっこう大変になるかも。

    なつき そうですよね。面接でも「何でこの大学を受けたんですか?」ってことになりますよね。

    ひろこ そう。それに、入学したら自分の研究したいことをゼミで発表して先生や他の院生にコメントをもらって、そのやり取りの中で自分のやりたいことを固めていくって感じになると思うんですけど、担当の先生とあまりにもかけ離れた研究内容だと誰もコメントできなくて1人ぼっち……なんてことになると辛いので。

    なつき それは孤独を感じますね。

    ひろこ もちろん、自分の研究分野以外の人の意見も大事だし、いろんな視点で自分の研究についてコメントもらえるのはいいと思うんですけど……。

    なつき バランスですね

    ひろこ そうですね。まあ、先生以外にも、大学院にいると学会や勉強会やいろんなことで研究している人や先生方と知り合えるから、そこからいろんな勉強の機会をもらったり研究のアドバイスがもらえたりもします。

    なつき 実際にそういうことはありましたか。

    ひろこ 私はこのインタビュー自体が勉強になっています。いろんなセンパイの話を聞けたので。これも大学院に入学していなかったら聞けなかったと思います。あとは学会に参加したときに「私もこういうことやりたいんです!」って話しかけて連絡先を聞いてメールをしてつながる、ってこともあります。

    なつき 私、まだ研究テーマが固まらないので迷います……。

    ひろこ いや、テーマとばっちり合う先生じゃなくていいと思いますよ。というかテーマなんて変わりますから。変わっても大丈夫ですから。なので、興味があるな〜と思える分野の先生がいるかどうかでいいと思います。大学院のホームページに先生のプロフィールと研究実績と、あとは卒業生の修士論文や博士論文のタイトルが載っていると思うので、それが参考になると思います。

    なつき ありがとうございます。修士論文のテーマって変わってもいいんですね。

    ひろこ むしろ変わる人のほうが多いと思います。私もだいぶ変わってしまいました。

    なつき どう変わったんですか?

    ひろこ 最初は教室ではなくオンラインで自律的に学ぶ学習者に興味があったんですが、それからいろいろあって、教室がなくなってしまった地域の学習者を対象にすることにしました。まあ、さすがにもうこれからは変更しないと思いますが、これでいいのか、これで修論が書けるのか、不安ですね……。まあ、やるしかないんですが。

     

     


    修士と仕事とお金


     

    なつき ちょっと話は戻るんですけど、お友達に誘われるまで受験までは考えていなかったんですよね。それはどうしてですか。

    ひろこ そうですね。正直、お金もなかったですし、仕事と両立できないなと思っていました。

    なつき そこなんです! けっこうなお金と時間がかかるじゃないですか。迷いますよね。

    ひろこ 私の場合、国立の大学院なので学費の面ではすごく助かりました。しか収入や成績などの審査が通れば減額もしてもらえるので。

    なつき そうなんですか! 国立だけですか。

    ひろこ 私立もあるのかな。ああ、奨学金とかなら私立でもあると聞いたことがあります。大学のホームページを見るとその大学独自がやっている奨学金の紹介はしているはずだし、他の財団が出している奨学金もありますよ。人文系は正直少ないけど……。

    なつき 確認します。

    ひろこ ぜひ。お金は大事ですからね。それに学費がどうにかなったとしても、仕事は減らさなくてはいけないので大変です……。

    なつき そうなんですよね。週5日は働けないですよね……。

    ひろこ 週5日どころか、週3日も大変かな。大学にもよると思うんですが、私が入学したときのスケジュールは朝から夕方まで大学に週3日通っていたので、働けるのは平日2日と土日だけでしたね。でも、授業がさっき話したようにディスカッションしたり自分で発表したりするので本や論文を読まなくてはいけないので……。

    なつき じゃ、お仕事はどうされたんですか。

    ひろこ それが、最初は平日2日は非常勤で働いていたんですけど、授業以外のカリキュラムだとかテスト作成だとかをしている時間がなくなってしまって……。あとは学生管理の責任とか、そういうのを考える余裕もなかったですね。それで、入学して1カ月ぐらいで学校に「辞めます」って言ってしまいました。

    なつき えっ! 急ですね。それって言いにくくないですか。いま、先生足りないですし。

    ひろこ そうなんですよ。その事情ももちろんわかっているんですけど、そのときは心身ともに辛かったので「もう無理です。辞めます」って言ってしまいました。

    なつき そ、そうですか……。

    ひろこ そうなる前にぜひ、調整してください(笑顔)。

    なつき それからもう仕事は全然……?

    ひろこ いや、本当に私は金銭的にも受験する準備をしていなかったので、仕事は続けています。ただ、いまの勤務先は最初から大学院に通っているなどの事情をわかって採用してもらっていますし、そこはするべき仕事の範囲が明確なので働きやすいですね。残業もしなければしないほどいい、という考えの方が上にいらっしゃるので助かります。

    なつき 私もいま週5日働いているので……。どうしたらいいですかね。

    ひろこ 無理はしないほうがいいですよ。でも大学院によると思います。私の大学はとにかく朝早くから夜遅くまで授業があるので、本当に働けないんです。でも他の大学院は午後からの授業だけとか曜日が固定されているとか……。こういう話も説明会で聞いてみるといいと思います。なかなかホームページには載っていないので。

    なつき わかりました。

    ひろこ でも本当にそんなにたくさんは働けないということだけ覚悟しておいたほうがいいですよ。

    なつき はい……。

     

     

     


    大学院の受験準備


     

    なつき 受験の準備は、具体的に何をしたんですか。

    ひろこ まず受験要項を見て、何が必要なのかチェックしました。提出書類がいろいろあるはずなので。あと、審査の内容も受験要項に載っているので確認しました。審査には、研究計画書と筆記試験があって、筆記試験は日本語教育に関する試験と、語学の試験があったりなかったりします。

    なつき 受験要項はホームページからですよね。

    ひろこ はい、PDFでダウンロードできます。あと大学の事務所にもあるので直接ももらえると思いますが、まあ、ダウンロードしたほうが早いですよね。

    なつき 試験対策ではどんな勉強をしましたか。

    ひろこ 私は日本語教育の経験者枠で受験をしたので、語学試験はありませんでした。なので、日本語教育関係の試験勉強だけでした。

    なつき 試験ってどんな感じですか。

    ひろこ 有気音と無気音の違いは何か、とか、副詞の種類は何か、とかですね。

    なつき 日本語能力検定試験に近いですか。

    ひろこ はい、そうですね。内容はそんな感じなんですが、それを論述するという試験でした。試験については過去問を友達がくれたので、それに論述で答える練習をひたすらしました。

    なつき 過去問ってどこで手に入れるんですか。

    ひろこ 私の大学は説明会のときに見せてくれました。あとは大学の事務所に行けば見られるらしいです。他の大学でも同じだと思いますが、ちょっと自信ないです。

    なつき その勉強、楽しそうですね。ちょっとワクワクしてきました。

    ひろこ でも研究計画書がけっこう……。

    なつき 大変でしたか。

    ひろこ まあ、書いたことなかったので。

    なつき 準備期間はどれぐらいかかりましたか。

    ひろこ 説明会に行ったのが確か6月で、出願が9月末だったから、3カ月ぐらいですね。

    なつき 最初にとりかかったのが研究計画書ですか。

    ひろこ いやいや、最初はその過去問をやっていました。このとき、仕事が忙しくて全然時間がとれなかったんで。だから研究計画書は日本語学校が夏休み入った瞬間に書き始めて2週間ぐらいで書きました。

    なつき 2週間?!

    ひろこ もちろん、その前にどんな研究をしようかを考えたり、「研究計画書の書き方」みたいなサイトを見たり、本や論文を集めたり読んだりはしていました。あとはラフな研究計画書も作っていましたよ。

    なつき それ、私にもできますかね。いま忙しくて、時間がとれなくて……。

    ひろこ できるかどうかはわかりませんが、あまりお勧めはできません。あとから見ると捨てたくなる計画書になってしまったので……。本当によく合格したなと思います。心の広い先生方に感謝しています。

    なつき いやいや、そんなことはないと思いますよ。今日はいろいろお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。

    ひろこ いいえ、参考になったら嬉しいです。

    1年以上連載させていただいた「センパイ」インタビューですが、今回が最終回です。この連載を通して、センパイ方の研究だけでなく人生についてもお聞きできて、いろんな刺激とアドバイスをいただけました。記事を読んでいただけた方に少しでもお伝えできていれば幸いです。大学院も研究も楽しいです。これから無事に修論が書けるように私も頑張ります! 今までありがとうございました!

     

     

     

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