センパイ!大学院って何をすればいいんですか!? vol.1 村上吉文センパイ

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センパイロゴこのたび、大学院に通うことになりました。アルハムドリッラー!(アラビア語で「神様のおかげで」という意味)。でも、大学院の研究ってどうすればいいのか、どうしたらその後のキャリアにつながっていくのか、何がなんやらまだわかりません。そこで、センパイ方に聞いてみることにしました。第1回は、ICT✕日本語教育で有名な村上吉文さんにお話をうかがいました。

※2人の会話はMP3データをダウンロードして聞くこともできます。記事の下をご覧ください

 

《センパイ》村上吉文(むらかみ・よしふみ)氏 国際交流基金の上級専門家。これまで、国際協力機構(JICA)や国際交流基金からモンゴル、サウジアラビア、ベトナム、エジプト、ハンガリーなどへ派遣されてきた。ブログ「むらログ」(http://mongolia.seesaa.net/)では、日本語教育とICTに関する記事や、教育機関によらず自らの力で日本語を学ぶ「冒険家」たちについてのインタビューを発信中。ちなみに「むらログ」はKindleでも販売しています。

 

《聞き手》中山裕子(なかやま・ひろこ) 大学卒業後、旅行会社の社員を経て日本語教師に。国内の日本語学校や中東のヨルダンで日本語を教えてきた。4月から大学院で日本語教育を研究する予定。修士課程は2年しかないので、時間はムダにできない! でもわからない!

 


大学院に入るまで


中山 今日はお忙しい中、お時間いただき、ありがとうございます。

村上 いえいえ、大丈夫ですよ。

中山 今日は村上さんに日本語教師の仕事やキャリアプラン、大学院で学んだことをお聞きしたいんですが、まず村上さんが大学院に行かれたきっかけを教えていただけますか。

村上 まず大学院に行く前に(青年海外)協力隊で3年間モンゴルに行ってたんですけど、そこでまだまだ勉強不足だなとわかったので、研究したいというよりもっと日本語教育について勉強したいという感じでしたね。

中山 なるほど。ちなみに協力隊でモンゴルに行かれる前は日本語教師をされていたんですか。

村上 あ、してましたよ。それは民間の埼玉県の普通の日本語学校で教えていました。

中山 それはどのぐらい……あ、これ前のインタビュー(中山が2013年に行ったインタビュー→リンク)でも聞きましたね、失礼しました。

村上 大丈夫大丈夫、そこは1年弱ぐらいですね。

中山 ありがとうございます。では、国内で1年、海外で3年、日本語教師をした後で、どんなことを学びたいと思ったんですか。

村上 当時はそこまで絞れていなかったですね。これは他の人に対して反面教師のような意味でいうと、僕は絞れていなかったので、入ってから困ることになります。

中山 そうなんですね。大学院を受験する際に研究計画書を出すと思うんですが、その時点ではあまり固まっていなかったってことですか。

村上 大雑把にいうと、教育学というよりも国際協力としての日本語教育の望ましい姿は何かを漠然と考えていました。

 


大学院の研究で大切なこと


中山 大学院に入学されてどのような2年間を過ごされたんですか。

村上 僕の場合は延長したので結果として3年になっちゃったんですけど……。

中山 でも3年とはいえ短いですよね。その短い時間をどのように過ごしたらいいのかを教えていただけますか。

村上 僕の場合はテーマをしっかり決めなかったのが2年で出られなかった最大の原因でした。実は、僕は卒業というか修了する前に国際交流基金の仕事に応募して1年サウジアラビアに行ってたんですよ。

中山 なるほど。また、サウジアラビアとモンゴルは全然違いますね。

村上 そうなんです。モンゴルは経済状況は最低でしたが、日本語教育としては熱心だったので問題がなかったんです。でもサウジアラビアはその反対で、お金はあるけど日本語や日本への関心もニーズもなかったし、当時はインターネットもなかったですし。そういう環境の中での日本語教育の意味というのを考えるようになって、帰国してからそういった内容を調べて論文を書きました。

中山 サウジアラビアには修士の2年目に行かれたってことですか。

村上 そうです。なので、サウジアラビアから帰国して1年で論文を書きました。

中山 ということは修士の1年目はテーマを決めかねて1年、という感じですか?

村上 そんな感じですね。

中山 テーマって大切なんですね。

村上 そうそう、でもまあ中山さんは大丈夫だと思いますよ。もう決まっていますから。

中山 え、う、がんばります。

村上 ブレないっていうのは大事ですよ。2年で出るならブレない、これです。

中山 確かにテーマを決めるっていうのは大事なことだと他の人からも聞いたことがあります。今では村上さんといえばICTや冒険家メソッドといったテーマが専門として確立されていると思うんですが、当時はそこまで興味がなかったってことですか。

村上 モンゴルでは教育の現場では問題が少なかったというか。モンゴル語と日本語も近いし、学習者も勉強すれば伸びていくし……。

中山 確か当時はインターネットがなかったので孤立環境だったとおっしゃっていたと思うんですが。

村上 それはそうなのですが、教師が教えることさえちゃんとしていれば学習者が伸びていくという状況でしたので、そういった意味の問題はなかったです。

中山 では、問題があるところからテーマが見つかるということですね。なるほど、ありがとうございます! 他に気をつけることって何かありますか。

村上 あとはデータですね。教授法の研究をする場合だったら教室の中でしか取れないデータがあるので、例えば試験の結果や作文など、現場に立っていないと手に入れにくいものがあるので、そういったものが必要な研究をしたいなら大学院に入る前にとっておいたほうがいいですね。まあ今はインターネットがあるので、いろいろやりやすくなっているとは思いますが。

中山 テーマとデータですね。では次に、大学院に入った後のキャリアのために在学中にどんなことをされていたんですか。

村上 北浦和の国際交流基金と日本語教育学会が合同でやっていた週2回の実習コースがあって、それに通っていました。そこで青年海外協力隊から帰ってきた人や、交流基金の専門家と知り合って、実はそこで初めて(交流基金の)専門家という仕事があることを知ったんです。それで在学中に応募してサウジアラビアに行くことになったんです。

中山 なるほど。

 


これからの仕事と理想の日本語教師


中山 最後にこれからの目標というか夢があったら教えていただけますか。

村上 当面はいろいろ僕の考えていることをブログだけじゃなくていろんなチャンネルを通して発信していきたいなと思っています。そして今は教師向けが中心なので、このままでは独習者(日本語を一人で勉強している学習者)には届かないので、そこに届けられるようにしていきたいなと。

中山 すみません、最後の質問とか言っておきながら独習者についてもっと聞きたいんですけど。

村上 どうぞ、構いませんよ。

中山 独習者に向けてどうやってアプローチしていけばいいのでしょうか。

村上 フェイスブックのグループが一つありますよね。なければ作っちゃえばいいんですよ。僕も一昨年の9月ぐらいに作ったコソボの日本語学習者向けに作ったグループも130人ぐらいいますから。

中山 どうしてコソボの学習者向けにグループを作られたんですか。

村上 ひとつは僕の管轄している中で日本語教育機関がない国だったからですね。

中山 なるほど。面白いアイディアですね。私もやってみたいです。これからもそういった独習者というか村上さんの言葉でいうと「冒険家」の皆さんに向けて発信していくのが村上さんのお仕事というかライフワークになりそうですか。

村上 そうですね。仕事と関わらなくてもやっていくと思います。

中山 ありがとうございます。もう聞きたいことは全部聞けたと思います!

村上 また何かあったらいつでも聞いてください。

中山 あ、最後の質問と言っておきながら追加で聞きたいんですが、今後どんな日本語教師がいたらいいなと思いますか。

村上 やっぱりいろんなレベルで底上げしなくちゃいけないことってありますよね。それとは別にとんがっている人というか、その人にしかできないことをしている人がいたらいいなと思いますよ。例えば日本語教師芸人のぽぷら先生とか……。そういうのが好きな人にはすごくハマると思うんですよね。

中山 みんながみんな同じじゃなくていいってことですよね。

村上 同じじゃない方がいいですよね。多様な先生が出てきて、多様な学習者に対応できるようになるというか。

中山 今の言葉、すごく大切だと思います。多様な先生が少ないから、多様な学習者に対応できないかもしれないですね。

村上 そうですね。まだうまくつなげられていないってことはありますよね。

中山 わかりました。ありがとうございます。頑張ってこのインタビューを発信します!

村上 いえいえ、僕も聞きたいのでこれからのインタビューも頑張ってください。

中山 はい!コソボ出張でお疲れのところ、ありがとうございました。

 

2人の会話はMP3データをダウンロードして聞くこともできます。ダウンロードはこちら↓

 

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