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    【連載】ソーシャル・メディアをめぐる冒険〈毎月第4金曜日更新〉

    第17回 ネットの向こうから審査してもらおう

     

    冒険家のみなさん、こんにちは。

    僕は3日前に日本からカナダに戻ってきたところですが、東京はまだ30℃を超えているのに、こちらはもう最低気温6℃、最高気温13℃という日本でいえば冬のような気温です。これでも北半球なんですけどね。

    さて、前回は YouTube Live を使ってスピーチコンテストをライブ中継する方法についてご紹介しました。YouTube Live でもチャットの機能を使って視聴者からフィードバックを受けることができますし、録画でもコメント欄からフィードバックをもらうことができます。

    こうしたインターネットの向こう側にいる視聴者などの参加者からは、カジュアルなコメントの他にもっとイベントに直接的に関係する形でフィードバックをもらうこともできます。その1つがコンテストなどにおける審査です。審査といっても多くの人が参加してくれることが見込まれる場合は、投票という形になることが多いでしょう。

     

    index

     

     


    事例紹介


     

    日本語教育関係のイベントで、インターネットで投票を呼びかける例はいくつもあります。本日は簡単に3つの事例をご紹介したいと思います。

     

    1. 国際交流基金ブダペスト日本センターの川柳コンテスト

    参考文献の中東欧日本語教育セミナーでの相川弓映さんによる発表によると、このイベントは以下のような8ステップを経て実施されました。

    1. まず各クラスで川柳に関する授業を実施して、川柳を書いてもらいます。
    2. その中からコンテストに出したい作品を選びます。
    3. その川柳をGoogleフォームの投票用紙に載せます。
    4. そのGoogleフォームをFacebookで拡散します。
    5. 投票結果が自動で集計されます。
    6. 投票用紙に記載されていたコメントを学習者にフィードバック。
    7. 上位3名の入賞者のインタビューをYouTubeに掲載。
    8. 投票の協力者にメールで結果を通知。

    この時は、24句の川柳がコンテストに出品され、わずか1週間ほどの投票期間で129名が回答してくれたそうです。中でも僕が非常に興味深いと思ったことは、1票も入らなかった作品が1つもなかったという点です。つまり、多くの人の目に触れることにより、評価の視点が多様化するわけですね。これが、こうした教室の壁を越えて行う活動のメリットの1つだと僕は認識しています。

     

    2. ウラル地方日本語ビデオコンテスト

    これは海外日本語教育学会での発表で共有されていますが、この時の発表によると、このコンテストは以下のようなプロセスを踏んで開催されたとのことです。

    1. 最初に原稿を作ってもらい、それを教員がチェックします。
    2. その原稿をもとに動画が作成されます。
    3. その動画をYouTubeで共有します。
    4. YouTubeの動画を埋め込んだGoogleフォームでWeb審査を行います。

    なお、この日本語ビデオコンテストではGoogleフォーム以外にも、YouTube上の「いいね」の数も審査の対象になったそうです。僕が非常に特徴的だと思ったのは、180人の投票者が世界52カ国にわたって分布していたという点です。このコンテストの目的の1つは、ロシアのウラル地方の魅力を発信することでもあったということなので、 コンテストをオンライン化することにより、まさに世界中にウラル地方の情報が共有されたわけですね。実際に「世界中の人が見てくれているということがモチベーションになり視野も広がった」というコメントが参加者からあったそうです。

     

    3. スイスの年賀状コンテスト

    こちらはそれぞれ非常に個性的な年賀状の画像がGoogleフォームに埋め込まれ、その中から3枚を選ぶというものです。「最優秀賞」「優秀賞」に加えて、「日本人の目から見てどうか」という視点から「日本人賞」という賞も設けられていました。これも、教室の壁を超えることによって、評価の視点を多様化することができるという例の1つですね。

    投票期間はすでに過ぎているのでGoogleフォームはもう投票できないようになっていますが、すべての作品を公式サイトでご覧になることができます。(参考資料)

     

     


    投票フォームの作り方


     

    さて、本日ご紹介した3つの事例で共通して使われていたのはGoogleフォームというオンラインアンケートのサービスです。これはこうしたオンラインコンテストの投票フォームとして使うときにも非常に便利です。まずは以下のGoogleフォームのサイトで実際に投票フォームを作ってみることをお勧めします。
    https://www.google.com/forms/about/

    それほど難しくないとは思いますが、 初めて使う人のために実際にGoogleフォームで日本語のビデオコンテストの投票用紙を作っているところの画面を録画してみました。

    「日本語教育いどばた 日本語ビデオコンテストの投票用紙の作り方」
    https://youtu.be/PtAmmAo2EEU

    この動画では以下の操作を行っています。

    1. 投票用紙のタイトルを入れる
    2. 名前の入力欄を作る
    3. YouTubeにアップロードされてある動画を埋め込む
    4. 評価項目ごとに点数を入力する質問を作る
    5. 完成した投票用紙から実際に投票を行う
    6. ソーシャルメディアで共有するために投票用紙のリンクを取得する

    パソコン上の操作はこうして動画を見ると一目瞭然ですから、ご不安のある方はぜひご覧ください。なお、ここで作った投票用紙は以下で公開されています。
    https://goo.gl/forms/zj6Lco3u976Jq6R82

    さて、今月は情報発信するだけではなく、コンテストなどの順位の決定というイベントの中心的な部分でオンラインからかかわってもらうための方法や、その事例をご紹介しました。自分が投票した出場者や作品が1位になったりすると、 まるで自分がその学習者を育てたかのような錯覚に陥ることもあります。また、参加者にとっても、何十人、何百人という人に評価してもらえたのだということは、大きな自信につながることでしょう。先月のライブ中継に比べたら、Googleフォームの使い方は技術的にはそれほど難しいことではありませんので、ぜひ読者のみなさんもご自分の学校などで挑戦してみてください。

     

     


    参考資料


     

    中東欧日本語教育セミナー2016
    発表06 「実践報告・川柳コンテスト」 相川弓映 ハンガリー 国際交流基金ブダペスト日本文化センター
    http://www.ceeujep.org/videos/%E7%99%BA%E8%A1%A806-%E5%AE%9F%E8%B7%B5%E5%A0%B1%E5%91%8A%E5%B7%9D%E6%9F%B3%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E7%9B%B8%E5%B7%9D%E5%BC%93%E6%98%A0-%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%80%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E4%BA%A4%E6%B5%81%E5%9F%BA%E9%87%91%E3%83%96%E3%83%80%E3%83%9A%E3%82%B9%E3%83%88%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%96%87%E5%8C%96%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF/48

    国際交流基金 – 世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)実践!人と人をつなぐ日本語教育 : https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/dispatch/voice/voice/touou/hungary/2016/report01.html

    海外日本語教育学会 平成30年度 第1回研究会「ロシアの日本語教育」 – YouTube :
    https://youtu.be/vaC30D680kI?t=1h22s

    【結果発表 Объявление результатов】ウラル地方日本語ビデオコンテスト2018 / Видео-конкурс на японском языке в Уральском федеральном округе 2018 – YouTube : https://www.youtube.com/playlist?list=PL2EcqN4JXgHK0F8X7AWZVGxuqL8AflHCM

    ロシア ウラル地方日本語ビデオコンテスト(グループA) : https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdIm-bFhRNPQ4h_Vifaw9ALehLVveeJ_q2Oc8pq-YMyha2WPQ/closedform

    ロシア ウラル地方日本語ビデオコンテスト(グループB) : https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfLmZtyjgmPK4t_c5Py68SstzXcejyTZVN4xy-1U6jCmOIxdw/closedform

    ロシア ウラル地方日本語ビデオコンテスト(グループC) : https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScYNFXJcKiO-cp4YTqmTg6cxLHOWylEj0xIpDKIjEE0ShMshg/closedform

    ロシア ウラル地方日本語ビデオコンテスト(グループD) : https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeqefwl6l4tFvdtP0OC86Ouy7nbqB9Nt7nBRaufV20HbPfRlA/closedform

    スイス年賀状コンテスト
    https://nengajocontestswitzerland.jimdo.com/

    2018年第1回スイス年賀状コンテスト(ギムナジウム) : https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfuhzn13DqoALSdZPbI87DYEmL_6LZx-ZmZyeifKhzeG0Aqqg/closedform

    2018年第1回スイス年賀状コンテスト(成人学習者) : https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScmCLS8gPwMcf6LaRWmmI2nd7rs_FvFDefeUA2SaV9j2zEaWw/closedform

    「日本語教育いどばた 日本語ビデオコンテストの投票用紙の作り方」
    https://youtu.be/PtAmmAo2EEU

     

    近刊紹介
    SNSで外国語をマスターする方法について筆者がまとめた書籍『冒険家メソッド』(ココ出版)が、近日刊行予定!!

     

    《筆者》村上吉文 冒険家。これまで、国際協力機構(JICA)や国際交流基金からモンゴル、サウジアラビア、ベトナム、エジプト、ハンガリーなどへ派遣されてきた。2017年5月からカナダのアルバータ州教育省に勤務。ブログ「むらログ」(http://mongolia.seesaa.net/)では、日本語教育とICTに関する記事や、教育機関によらず自らの力で日本語を学ぶ「冒険家」たちについてのインタビューを発信している。

     

     

     

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