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    【連載】ソーシャル・メディアをめぐる冒険〈毎月第4金曜日更新〉

    第4回 教師自身が使いこなすために必要な第一歩

     

    みなさん、こんにちは。冒険家の村上です。

    さて、7月のはじめ、Twitterで教育とソーシャルメディアに関するこんな書き込みがあったので、今月はここから話を始めてみたいと思います。

    僕がこの原稿を書いている時点で600回以上もRT(転載)されているので、多くの方の目に触れたのではないかと思います(編集部注:このアカウントは現在削除されています)。僕はこの投稿を見て「どうもSNSに対して大きな誤解がある気がするなあ」と思っていたのですが、それだけでなく、この投稿に対するコメントにも以下のようなものがありました。

    「基本的にSNSはパブリックな場であることを忘れてはいけないと思います。」

    「公の場で発言する際のマナーは大事だと思います。」

    「FacebookはともかくTwitterなら、教師であることを周りに知られない努力をすれば愚痴っても大丈夫でしょ?」

    これらは基本的に「共有範囲は自分でコントロールできる」という基本的な事実が認識されていないという意味で、誤解です。これらのコメントに対して「いや、違うよ」というようなコメントも見受けられないので、共有範囲のコントロールについてはまだあまり認知がされていないと考えてもいいのかもしれません。そして、同業者のみなさんによく聞く「ソーシャル・メディアを積極的に使わないわけ」の多くがまさにこの問題だったりしますので、今回は日本語教師のみなさんがもっと積極的にソーシャル・メディアを使えるように、TwitterとFacebookを例にとって、どのように共有範囲をコントロールするのかご紹介してみたいと思います。そうすることが、結果的にはみなさんが授業でソーシャル・メディアを使ったり、ソーシャル・メディアを通して成長することにつながると信じているからです。

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    Twitterは「鍵垢」と「裏垢」を使いこなそう!


    TwitterはFacebookに比べてシンプルなので、まずはこちらからご紹介したいと思います。Twitterで共有範囲をコントロールするには、主に2つの方法があります。

     

    ひとつは公開ツイートと非公開ツイートの違いを認識することです。公開ツイートは文字通り全世界に公開されていて、TwitterのIDを持っていない人も読むことができます。僕のTwitterアカウントは公開ツイートです。

     

    一方、非公開ツイートは本人が承認したフォロワー以外の人は読むことができません。「鍵垢」と呼ばれることもあります。ツイートを非公開に設定すると鍵のマークが表示されるからです。つまり、誰とでも分け隔てなく投稿を共有したい人は公開ツイートにして、逆に知らない人には読まれたくない人は、非公開ツイートにすればいいわけです。なお、現在のTwitter社の仕様では、公開か非公開かは投稿ごとではなく、アカウントごと設定することになっていて、同じアカウントでツイートごとに公開、非公開を変えることはできません。

     

    もうひとつの共有範囲のコントロールは、複数アカウントを作るという方法です。Twitterは匿名で使うことが許されているメディアで、かつ、一人で複数のアカウントを持つことも禁止されていません。したがって、仕事用の実名アカウントを持っている人が、プライベート用の匿名アカウントを持っているということもあります。仕事の愚痴などはもちろんプライベート用のアカウントで書けばいいわけです。僕も、オランダ語学習用に、日本語を学んでいるオランダ人だけをフォローしてオランダ語でしか投稿しないアカウントを作ったりしたこともあります。

     

    なお、上記「鍵垢」の「垢」は「アカウント」の隠語で、似た言葉に「裏垢」もあります。これは主に名前を出しているオモテのアカウントとは別にある匿名のアカウントのことです。

     


    Facebookはリストの作成がキモ!


     

    Twitterが匿名メディアの代表だとすると、Facebookは実名メディアの代表といっていいでしょう。他に主なものとしてはGoogle+も実名主義を取っています。

     

    Facebookでは利用規約4-2に「個人用アカウントを複数作成することは認められません。」と明記されていて、仕事用として学生と共有するためのアカウントと、プライベート用として趣味やお酒のことを書いたりするアカウントを使い分けすることができません。利用規約に反していることが分かるとかなり簡単にアカウントを削除されてしまったりしますので、該当する方はお気をつけください。

     

    でも、学生向けのまじめな投稿を飲み友達に見られてしまうのって恥ずかしいですよね。見られてしまうだけならいいのですが、その飲み友達が学生にコメントなどし始めたら目も当てられません。そのために、FacebookでもTwitterと同じように共有範囲をコントロールする必要があります。

     

    でも、Facebookは前に書いたように複数のアカウントを持つことはできません。複数のアカウントが持てないのなら、Twitterのように仕事用とプライベートを使い分けることなんか不可能じゃないのか? そう思う人が多いのですが、実はできます。Twitterにはない「リスト」という便利な機能がFacebookにはあるからです。

     

    「リスト」というのは、文字通り友達のリストです。僕は日本語教師のリストとか、小学校や中学校の同級生のリストとか、担当したクラス別のリストや、学生の国別のリストを作っていて、いま数えてみたらリストは全部で180もありました。まあ、僕はFacebookを仕事でも活用している人間なので普通の人よりずっと多いのではないかと思いますが、普通の人でも私的なリストと公的なリストのどちらかは作っておいたほうがいいのではないかと思います。

     

    作成したリストをどう使うというと、何らかの投稿をするときにそのリストに載っている人限定で共有するのです。まじめな内容は公的なリスト向けに投稿し、遊びの内容は私的なリストに投稿すればいいのです。

     

    面倒くさい人は私的なリストか公的なリストのどちらかだけを作っておくだけでも十分です。なぜなら、Facebookでは「〜のリストの人だけを除く」という共有範囲の設定もできるからです。つまり、Facebookで公的な付き合いの多い人なら、私的なリストに載っている友達を除いて共有することができますし、逆にFacebookをほとんど遊びで使っている人は、公的な関係の人だけをリストにして、その人たちだけを除いて遊びの写真などを共有すればいいのです。

     

    Facebookでは複数のリスト向けに同時に投稿することもでき、たとえば僕は宗教別のリストを作っていないので、ラマダンのお祝いなどは「アラビア」「トルコ」「インドネシア」「マレーシア」などのイスラム圏の国のリストを共有範囲を設定して投稿しています。

     

     


    語学学習への応用


     

    さきほどオランダ語の例で出しましたが、仕事とプライベートを分けるというほかに、語学学習の面でもこの「共有範囲をコントロールする」というのは非常に重要です。感じ方はいろいろだと思いますが、たとえば僕の場合、ハンガリー語の勉強の記録などをハンガリーとは関係のない人に見られるのはちょっと恥ずかしいし、ぜんぜんハンガリー語を知らない人から「えー、村上さんハンガリー語が話せるんですか、すごいですね!」なんてコメントが来ようものなら、ずっと初級レベルをさまよっている僕のハンガリー語を目にしている中級者、上級者に対して恥ずかしすぎます。しかし、ハンガリーにいた3年間はそんな恥ずかしいこともありませんでした。ハンガリー語に関するちょっとした疑問や、ハンガリー映画のスクリプトの文字起こしなどや感想などをFacebookで共有したりしていましたが、これらは基本的にハンガリー関係のみなさんにしか共有していなかったからです。ですから、みなさんが教師として学習者に「ソーシャル・メディアに日本語で投稿しなさい」という課題を出すときにも、こうしたことを知っていれば日本語話者だけに限定して読んでもらうことができますから、学習者の感じる抵抗や違和感も減らすことができます。

     


    共有範囲のコントロールは21世紀のリテラシー


    さて、今回はTwitterとFacebookに限定してお話しましたが、このように「共有範囲をコントロールする」というのは、他にもオンラインカレンダーなど、いろいろなところで必要になってくる概念です。個人が情報を発信するソーシャル・メディア時代においては基本的なリテラシーのひとつではないかと僕は思っています。

     

    その意味で、今回の記事の冒頭に紹介したように、学校の教員に対する研修会でこういった基礎的なレベルのリテラシーを持っていない人が講師として招かれて、共有範囲がコントロールできないような前提で話をされてしまうのは非常に残念なことです。「日本語教育いどばた」の読者のみなさまにおかれましては、「日本語学習にSNSを使うな」というような単純な禁止ではなく、「違和感なく日本語で書き込めるように共有範囲をコントロールしましょう」という方向でご指導ください。もちろん、学生の安全を考えればそんなに安易にソーシャル・メディアを使わせる訳にはいかないというご意見もあるでしょう。そこで、来月は学生の安全に配慮しながらソーシャル・メディアを使うために留意しなければいけないことを中心に書いてみたいと思います。

     

     

    参考資料

    国語教師さんのTwitter
    https://twitter.com/Japanes_Teacher/status/882706008526561280 ※アカウントが削除されています

    公開ツイートと非公開ツイートについて | Twitterヘルプセンターhttps://support.twitter.com/articles/243055

    Facebookサービス規約
    https://www.facebook.com/legal/terms

     

    近刊紹介
    SNSで外国語をマスターする方法について筆者がまとめた書籍『冒険家メソッド』(ココ出版)が、近日刊行予定!!

     

    《筆者》村上吉文 冒険家。これまで、国際協力機構(JICA)や国際交流基金からモンゴル、サウジアラビア、ベトナム、エジプト、ハンガリーなどへ派遣されてきた。2017年5月からカナダのアルバータ州教育省に勤務。ブログ「むらログ」(http://mongolia.seesaa.net/)では、日本語教育とICTに関する記事や、教育機関によらず自らの力で日本語を学ぶ「冒険家」たちについてのインタビューを発信している。

     

     

    連載バックナンバー

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険  第3回 自律性と一斉学習

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第2回「冒険家の実像」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第1回「なぜソーシャル・メディアか」

     

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