のぞいてみよう! 多読の世界 第5回 多読授業、こんな時どうする? Q&A 10選

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「多読って、聞いたことはあるけど…」これから日本語教師を目指す方、現場に立つ先生方に、日本語多読をもっと知ってもらうための連載。日本語多読支援研究会メンバーで構成されたウェブマガジンスタッフが、すでに多読を行っている国内外の教育機関やボランティア教室の先生方の声をお届けし、日本語多読が持つ可能性についてみなさんと考えていきます。

第5回 多読授業、こんなときどうする? Q&A 10選

この連載も5回目になりました。これまで様々な多読活動の様子をお届けしてきましたが、「やってみたいけど、今ひとつよく分からない」という方もいるかもしれません。一斉授業と違ってクラス全体で同じ読みものを使わない多読では、まず大量の本が必要になります。そのため、お金もかかるし、本をどこに置くか、どうやって運ぶか、という問題も起こります。

いざ多読活動を始めてみても、疑問は尽きません。「先生は教えないっていうけど、何をしたらいいの?」、「ただ静かに読んでいるだけでいいの?」、「テストはするの?」。
はじめはだれでも悩みます。

そこで、今回は支援経験の豊富な多読実践者の声をもとに、10の疑問・質問にお答えしようと思います。担当は、日本語多読支援研究会のメンバー纐纈憲子(はなぶさ・のりこ)です。

この10の疑問・質問は、よくみなさんから寄せられるものを選びました。以下の回答は、粟野真紀子先生(NPO多言語多読)、遠藤和彦先生(仙台国際日本語学校)、作田奈苗先生(津田塾大学、文京学院大学など)、そして、私、纐纈憲子(米国ノートルダム大学)の経験をもとにしています。
では、多読をゼロから立ち上げるに当たっての質問からまいりましょう。

Q1どんな本が何冊ぐらい必要でしょうか?

A1学習者の人数によりますが、30冊ぐらいから始められます。

本を揃えるなら、まず日本語多読用読みものをおすすめします。現在、NPO多言語多読監修の読みものが、以下計142タイトル出版されています。

・『レベル別日本語多読ライブラリーにほんごよむよむ文庫』(アスク出版)
・『にほんご多読ブックス』(大修館書店)
・『にほんご多読ブックス』(NPO多言語多読自費出版9冊)

読みものは下の表の通り、レベル0~5の6レベルに分かれています。

※この表は「にほんご多読ブックス」で使われている基準です。レベル分けの目安へのリンクこちらから!

レベル別読みものへのリンクはこちらから!

レベル別多読用読みもの

これらの読みものは、学習者向けにレベル別の語彙や文法、字数の基準に沿って作られています。そのため学習者には読みやすいのですが、これだけを読んでいると、日本語母語話者向けの本を読めなくなってしまう可能性があります。

たとえば、普通の絵本には、日本語の教科書にない単語やオノマトペ、くだけた言い方などがたくさん出てきますよね。そのため、実は学習者にとって難しいことが多いんです。だからこそ、初級の早い段階から、レベル別読みものと合わせて一般書にも触れてもらったほうが後々のためにいいのです。

※おすすめの一般書へのリンクはこちらから!

一般の読み物

また、無料で読める読みものも増えてきています。タブレットなどでも読めますし、印刷して端を止めれば読みものが完成します。レベルがわかるように、シールを貼ったり、レベルの色に合わせた製本用テープを貼ってもいいですね。

※無料の読みものへのリンクはこちらから!

無料の読みもの
レベルがわかるように、色に合わせたシールや製本用テープが貼ってある

レベル別読みもの、絵本とマンガを数10冊、あと無料読みものを利用できれば、1クラス20人、週1回1時間弱で半年ほどは続けることができます。日本で多読支援をするなら、その都度図書館から借りてくる方法もあります。

ただし、1つ注意点があります。多読では下のレベルから読み始めるのが理想的なので、中上級の学習者だけの場合でも、やさしいレベル0の本から揃えたほうがいいんです。その理由は、のちほどQ4、5でくわしく説明します。

ひとくちメモ『海外支援者向けヒント』

海外在住の支援者の方、「たくさんの本をそろえるなんて無理」とあきらめないでください! レベル別読みものだけでも始められます。

私は米国ノートルダム大学で、2013年秋に多読活動を始めました。クラス立ち上げ前に最初1年間行った多読クラブでは、毎回20〜25人ほど参加していたのですが、レベル別読みもののほかに、一般書は30冊弱しかありませんでした。それでも十分みんな楽しんでいました。

はじめから大量の本を揃えようと思っても、海外では特に難しいと思います。大切なのは、たとえ小規模でも読書を楽しめる環境を提供することです。あせらずに、少しずつ増やしていったらいかがでしょうか? 

多読開始当時の本と読書クラブポスター(米国ノートルダム大学)

日本語専門の図書館司書がいるアメリカの機関では、多読用図書として1000冊近く所蔵しているところもあると聞きます。しかし、私の勤務校では図書館の棚スペースが限られているので、常時置いてあるのは300冊ほどです。

毎学期25-30人ほど履修する多読授業には、このぐらいがちょうどいい感じがしています。
自分で読みたい本を持ってくる上級の学習者もいるし、本の選択肢が多すぎて迷ってしまう学習者もいるからです。

現在の日本語多読コレクション(米国ノートルダム大学図書館)

続いて、一般書についての質問にお答えしましょう。

Q2絵本や児童書ならどんなものでも多読活動に使えますか?

A2絵が内容理解の助けになっているもの、言葉の繰り返しの多いものを 選びましょう。

一般書を選ぶときに重要なのが、絵やイラストです。多読では基本的に辞書を使わないので、内容がわからないときに、絵をヒントにして理解するからです。また、言葉の繰り返しがあると、内容が推測しやすくなります。上に挙げた「おすすめの一般書」の本は、このような理由で選ばれています。

『うしろにいるのだあれ うみのなかまたち』(幻冬舎)

また、レベル0の本には「文字なし絵本」、つまり文字がなくて、絵だけの絵本もあるんです。たとえば、次のような本です。

文字なし絵本『レッドブック』(評論社)

「文字がない本を読むなんて意味がない」と思われる方もいるかもしれませんね。でも、ぜひ初回授業で、クラス全体で文字なし絵本を読むことをおすすめします。きっと、絵をじっくり細部まで見ることの面白さを体験できると思います。これが想像力や推測力を養い、辞書を使わずに読書を楽しむことにつながっていくんです。

絵には、時空を超えたストーリーを瞬時に語る力が秘められているんですよ。

文字なし絵本はこんなにたくさん! 

みなさんもぜひ「文字なし絵本」を手にとって読んでみてください。絵が持つ力、絵が語るストーリーの深さにきっと驚かされるはずです。

※文字なし絵本へのリンクはこちらから!

学習者は文字なし絵本が大好き!
左は『セクター7』(BL出版)、右は『絵巻絵本びっくり水族館』(こぐま社)

さて、ある程度本がそろったのでさっそく授業を始めたいけど、考えなくてはならないことが山積みです。

Q3教室と保管場所が離れていて、毎回本を運ぶのが大変です。

A3環境によりますが、台車、書籍用カート、キャリーバッグ、箱などを使ったらどうでしょうか。

いざ本を買うことができたとしても、次の課題は保管場所の確保です。学校内に図書館がある場合、多読用図書を蔵書として置いてもらうのが理想的ですが、関係部署の理解が不可欠になります。規模の大きい大学図書館では、司書だけでなく、蔵書目録、貸出など担当者が多く、ハードルが高いかもしれません。

アメリカの大学では、図書館ではなく、先生や学科のオフィスに本を保管するケースも多いようです。

図書用カート(米国ノートルダム大学)

保管場所と教室が離れている場合は、運搬方法も問題になります。図書用カートのほか、台車や箱、中にはスーパーのカートで運ぶ支援者もいるそうです。みなさん工夫をこらしながら様々な苦労を乗り越えているんですね。

台車で本を教室へ

多読では細かく教案を作る必要はありません。でも、本をそろえたり、保管場所に頭を悩ませたり、毎回本を運んだり、関係者と交渉したり、という一斉授業とは全く違うタイプの仕事がたくさんあるんです。

図書用カートのいろいろ(津田塾大学・神田外語大学)

やっと保管場所も確保できました。では、実際に多読活動を始めてみましょう。でも、いろいろ心配ごとも出てきました。

Q4学習者が静かに読んでいる間、何をしたらいいかわかりません。

A4学習者がどのように読んでいるのか、楽しんで読めているのか 観察してください。楽しく読んでいるのであれば、何もしなくていいのです。そうでなければ、本探しの手伝いをしましょう。

学習者はそれぞれ静かに自分の世界に入りこんでいる

多読を始めると、教師ならみんな手持ち無沙汰の状況に戸惑うはずです。「何もしなくていい」というのは居心地が悪く、つい頻繁に声かけしたくなってしまいます。しかし、学習者が読書に没頭している間は、声かけはしないほうがいいのです。

ある先生は、学習者から「邪魔しないで」と言われたとか。たしかに自分が本の世界に入りこんでいるときに、他人から声かけられたら嫌ですよね。

学習者が楽しんでいるか、快適なスピードで読んでいるか、頭の中で翻訳していないかなどを観察してみてください。そのほか、「自分も好きな本を読む」「本の整理をする」支援者も多いようです。

ひとくちメモ『読書記録』

本を1冊読んだあとには、学習者に「読書記録」を書いてもらったほうがいいでしょう。日本語でなくてもいいし、紙でもオンラインでもかまいません。

記録は支援者にとって読書状況を把握する材料になるし、学習者自身の振り返りにも役立ちます。学習者が読んでいる間、この「読書記録を読む」のもいいと思います。

紙の読書記録

私は、各学生に個々のGoogle Formsに記録してもらっています。

Google Forms 読書記録(米国ノートルダム大学)

記録はこんな感じでオンライン保存されていきます。

Google Sheets 読書記録 Responses(米国ノートルダム大学)

なるべく記憶が新しいうちに記録したほうがいいので、学習者は授業中にPCやスマホで記入します。

読書記録に記入する(米国ノートルダム大学)

下は、夏目漱石や村上春樹の小説をすらすら読んでいた上級の中国語母語話者が書いた読書記録の一部です。これを見ると、レベル0(入門)や3(初中級)、5(中上級)を混ぜて読んでいたことがわかります。

上級の中国語母語話者の読書記録。いろいろなレベルを混ぜて読んでいる

多読の楽しさを理解している上級の学習者は、理解しているからこそ、あえて低いレベルの本を読むこともあるんです。このように、読書記録は支援者にいろいろなことを教えてくれるのです。

村上春樹のエッセイも読むけど、絵本も大好き!

多読は普通授業の精読とかなり違うので、こんなことも起こります。

Q5辞書を引きたがる学習者がいます。また、逐一意味を聞きに来る学習者もいるのですが。

A5辞書を引かなくてもわかるレベルを読んでいるかどうか確認します。無理にレベルが高いものを読んでいるときは、やさしいものから始めるように促します。十分にやさしいものを読んでいるのに、辞書を引いている場合は、絵を見るように促します。

日本語多読には下の4つのルールがあります。

日本語多読の4つのルール

 1)やさしいものから読む
 2)辞書を引かないで読む
 3)わからないところは飛ばして読む
 4)進まなくなったら、他の本を読む

ただし、これらのルールは特に最初は絶対的なものではなく、ある程度臨機応変に対応していいと思います。はじめは辞書を引きたがる学習者もいますが、直接的に「辞書を引くな」などと止めたりはしないほうがいいでしょう。そんなときは「辞書を引きたくなったら、私に聞いてください」と言ってみてはどうでしょうか。

また、辞書を使わずに済むように、その人が楽に読めるやさしいレベルから読んでもらうことがポイントです。ここでも絵の力や繰り返しの言葉が理解の助けになるのです。

『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』(偕成社)

また、学習者が意味を聞いてくるのは悪いことではないのですが、支援者はすぐに意味を教えないほうがいいでしょう。根気強く、絵の中や文の前後にヒントがないか探しながら、アドバイスすることが大切です。そうすると多読のルールに沿った読み方も自然に身についてくるはずです。

さし絵をよく見るとストーリーがわかる!

プライドが高い学習者の場合、こんな問題も出てきます。

Q6学習者が難しい本ばかり選んで、なかなかやさしいレベルの本を読みたがりません。

A6難しい本でも楽しく読めていれば、基本的に構いません。大事なのは『読書』ではなく『勉強』になっていないかを見極めてあげることです。ただし、自分のレベルより難しいものばかり読んでいるのは要注意!

多読では、学習者がレベルにこだわりすぎず、楽しく読めているかが大切です。

自分の能力以上の難しい本でも、興味があれば読めてしまうことがあります。単に無理をして読んでいるのか、それとも心からの興味で読んでいるのか。よく観察して、必要なら本人と話して探る必要があります。

ただし、いくら興味があるからといって、いつも難しい本ばかり読んでいる学習者がいたら、気をつけたほうがいいです。Q5の「多読のルール」にあるように、やはりやさしいものをたくさん読んだほうが、たくさんの言葉が楽に体にたまっていくからです。難しいものだけでなく、テンポよく読める本もまぜた方がいいよ、と言ってあげてください。

とにかく楽しいのが一番!

「勉強」に対する考えを捨てきれない学習者は、レベルにしばられる傾向があります。
私は多読が初めての履修者には、上級であってもとりあえずレベル0を何冊か読んでみるようにすすめています。日本語がやさしくても、必ずしも書いてあることを知っているとは限らないからです。

たとえば「レベル別日本語多読ライブラリー」(アスク出版)の『大豆』は、レベル0でありながら、発酵期間によって違うタイプの味噌が作られることまで書かれています。上級の学習者でも知らないかもしれませんよね。

「レベル別日本語多読ライブラリー」『大豆』(アスク出版)

レベル0(入門)のレベル別読みもの

また、みなさんの中には「レベルを上げなければいけない」と思ってしまう支援者の方がいるかもしれませんが、レベル上げにこだわる必要はありません。

本を選び、ペースやレベルを決めるのは、学習者です。スラスラ読めるようになると、学習者は自然にレベルが上のものを選ぶようになります。目指すのはあくまで「読書の楽しさ」であり、日本語力はそれに伴って自然についてくるものなんです。

以前、上級の中国語母語話者が、初級の中国語母語話者に切々と説いているのを目撃したことがあります。
「私たち中国人は、漢字に頼って読んでしまいがちだけど、それは日本語を読んでいるんじゃないんだよ。だから、あえてレベルの低いひらがなだけの絵本を読むべきなんだよ。」
たしかに! と思いました。漢字圏の学習者がやさしいレベルを読むべき理由として、役立ちます。

ひらがな・カタカナだけの絵本
上級の学習者にとっても絵本は楽しい!

多読授業履修者といってもいろいろなんですよね、たとえば…

Q7もともと読書が嫌いな学習者がいて、授業中あまり楽しそうではありません。

A7『多聴・多観』をおすすめします! PCやタブレットで映画やドラマ、アニメ、YouTubeなどを観たらどうでしょうか。日本語で観ている限り問題はありません。

選択制クラスやクラブなど、自分の興味から多読活動を行っているところではあまり問題にはならないと思いますが、必修多読授業の場合、もともと読書嫌いの学習者もいるかもしれませんね。そんな場合は、まず「たくさん聴いてたくさん観る」から始めたらどうでしょうか。

私たちは、実は「読む」だけではなく、インプットを増やす手段として「聴く・観る」も重要だと考えています。ですから、読むことに抵抗を示す学習者には、「多聴・多観」から入るのもいいと思います。

第2回の連載に「多聴・多観」が紹介されているので、ご覧ください。

視聴覚教室(神田外語大学)
音声を聞きながら読む

また、レベル別多読用読みものには朗読音声CDがついています。それを聞きながら本を読む「聞き読み」を好む学習者もたくさんいます。また、NPO多言語多読の「にほんごたどく」HPには、最近webで読める無料の読みものにも朗読音声がつきました。

多読は個人活動だけど、ときには他の人と一緒に何かするのもきっと楽しいはず。

Q8個人で読むほかに、教室でできる活動にはどんなものがあるか知りたいです。

A8全体活動として、ブックトークが役立ちます。また、日本語母語話者による朗読によって、本に対する興味が高まることがあります。

「ねえねえ、この本、読んだ?」

よく行われている教室内活動として、ブックトーク、読み聞かせなどがあります。ブックトークは、読んだ本の感想などを共有する活動です。ほかの参加者の意見が聞けるし、みんな楽しんで行います。

自分で外国語多読を経験したことがあればおわかりになるかもしれませんが、ある程度読書量がたまってくると、自然に他人に話したい気持ちになってきませんか?そのタイミングでブックトークができたら理想的です。

また、大学生のような大人でも、教師による読み聞かせは意外にも喜びます。ほかのグループ活動としてビブリオバトルなどもあり、学習者の好みによって導入したらよいでしょう。全体の活動時間に合わせて色々入れられたら、変化もつきますね。

好きな本についてクラスメートと話すのは楽しい!

しかしながら、多読で一番重要なのは個人ベースの読書時間の確保です。

「一人で読んでいるだけでいいのか」と不安を感じる支援者は、毎回全体活動を入れたくなってしまうかもしれません。でも、発展的な活動は十分なインプット(=個人読書)の上に成り立つものであることを、くれぐれも忘れないでくださいね。

「ぼくは五味太郎の本が大好きなんだ」

さて、教育機関ではこんな問題も出てきます。

Q9多読ではどうやって成績をつけたらいいんでしょうか?

A9人それぞれ興味や読み方が違う多読には成績はつけられません。どうしても成績をつけなければならないときは、別の形でテストをする、課題を出すなどみなさん工夫をしているようです。

多読では、普通の授業のような共通テストができないので、成績を出さなければならない機関ではどうしたらいいか悩みます。できれば出欠状況のみでつけたいところですが、そうもいかないケースが大半かもしれません。その場合、読書記録や本に関するレポートなどを課すのはどうでしょうか。

ただし、多読本来の目的と反するので、「たくさん読んだか」「上手に書けたか」などは見ないほうがいいでしょう。「提出したかどうか」「期限内に出したか」などに着目すべきだと思います。

米国ノートルダム大学での正規多読授業は、1-2単位 (週1回50分または100分) です。成績の基準は、出席・授業参加 (25%)、読書記録 (15%)、自己評価レポート (15%)、学期末プロジェクト発表 (30%)などとしています。提出物の日本語や内容、構成などは評価しませんが、締め切りの厳守を徹底しています。英語多読の先生の中には、読んだ冊数やレベルを評価対象にすることもあると聞きますが、私はしていません。指示されてやらなければならないことが増えると、一人ひとりが楽しく読む「多読」ではなくなってしまう気がするからです。

成績づけについて頭を悩ませる方も多いと思いますが、従来の評価方法を見直すいいチャンスになるととらえてみたらどうでしょうか。

学期末プロジェクト発表の様子(米国ノートルダム大学)

学期末プロジェクトでは、学習者たちの個性あふれる作品を見ることができます。それも含め、米国ノートルダム大学の多読授業については、また改めてくわしくお伝えします!

米国ノートルダム大学初級日本語多読コース中間自己評価フォーム(一部)

多読、始めてはみたけれど、まだまだ悩みは尽きません…。

Q10多読支援に慣れてきたと感じたのは、支援を始めてからどのくらいのときですか?

A10数年たって、ほとんどの学習者が多読が好きだということがわかり、落ち着いて自信を持って取り組むことができるようになりました。 学習者の読書傾向、本に対する個人の好き嫌いも見えてきました。

多くの支援者は数年続けると「このやり方でいいんだ」とある程度自信がついてくると思います。人によって違うと思いますが、私が慣れてきたと感じるには5年ほどかかりました。

仙台国際日本語学校の遠藤先生は、学習者の観察記録をつけることによって、個々の学習者のことをよりよく知ることができ、個人として彼らとの距離が縮まったと思えるようになったそうです。このような日々の積み重ねが、クラス運営にもいい影響を与えるのではないでしょうか。

一斉授業ではできない「一人ひとりをよく見る・よく知る」ことが、多読で一番大事なんですね。

一人ひとりの学習者をよく観察してみよう

とはいえ、機関ややり方によって状況は様々です。

NPO多言語多読の粟野先生は、ご本人が多読支援そのものに慣れて自信がついたあと、高校生に多読を取り入れたところ、理解が得られなかったことがあるそうです。対象者によってはまだ手探りのところがあるんですね。

オープンスペースに本を置いてみた(神田外語大学)

個人個人に寄り添う多読では、学習者全員に同じやり方が通じるとは限りません。支援者それぞれが臨機応変に学習者に対応し、常に模索していく必要があるんです。これこそが多読支援の面白さであり、醍醐味であると思います。

以上、今回は多読支援への疑問にお答えしました。

次回は地域で行われている多読活動に潜入します。どうぞお楽しみに!

[今回の担当] 纐纈憲子(はなぶさ・のりこ/米国ノートルダム大学Professor of the Practice)

学習者の多様化により、一斉授業の形で全員に満足してもらうことはますます難しくなってきています。そんなときに個別学習の多読を知り早7年。多読によって引き出される学習者の自律性・創造性に驚かされたことは数え切れません。同時に、教師としての自分のあり方も大きく変わってきました。教師人生の中で多読に巡り合えて本当によかった、と心から思います。一人でも多くの人に多読のもつ可能性を知ってもらいたいです。

取材・編集:日本語多読支援研究会

日本語多読支援研究会は、NPO多言語多読の中のグループです。NPO多言語多読の会員の中で、特に日本語多読の研究普及を目指すメンバーで構成されています。

※この連載は、JSPS科研費 19K20963の助成を受けています。

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