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    5月16~18日の3日間、東京ビッグサイトにて、学校向けICT製品・サービスを網羅した展示会「教育ITソリューションEXPO(通称:EDIX)」が開催されました。私も教材制作会社の一員なので行ったことはあるのですが、今回は「せっかく行くならレポートしよう」と考え、日本語学校の先生の視点をリサーチ。東京三立学院の及川先生に電話してみました。

     

    平井:毎年EDIXにいらっしゃるとうかがいましたが、どんな点をご覧になっているんですか?

     

    及川:日本語教育そのもののを扱う展示は少ないので、英語をはじめ語学関係の展示はもちろん見ます。また、これからの教育がどのように行われるようになるのかも知りたい。うちの学校で日本語を学んだ学生たちは、次に大学などで日本人といっしょに学ぶようになります。そのときに学びのスタイルが違ったら戸惑うでしょうから。

     

    (いきなり深イイ話、来た!)

     

    以前は日本の教育も読み書きが中心で、覚えたことを試験するスタイルでした。でもいまは学習者主体のスタイルに変わってきています。日本語指導も、そこにつなげていく意識で行うために、毎年、EDIXで新しい学びのスタイルをチェックしています。

     

    先生、電話ではお聞きしきれないので、お供してもいいですか?

     

    いいですよ。

     

    というわけで、及川先生に教えていただきながらEDIXを回ってきました。

     

     

     


    教育ITソリューションEXPOとは


     

    教育ITソリューションEXPO(通称:EDIX)

    ICT導入・検討のための展示会。5月に東京、11月に大阪の年2回開催。東京ビッグサイトの来場者数は3万人を超え、教育分野で日本最大である。学校業務支援、教材コンテンツ、eラーニング、ICT機器、セキュリティ、プログラミング教育などを提供する企業が700社出展し、製品の紹介やデモ、模擬授業などを行う。また教育業界の第一線で活躍する人達によるセミナーも開催。

     

    会場は7つのゾーンに分けられています。

    • 教材・教育コンテンツゾーン:デジタル教科書、デジタル教材、教育ソフト、学術情報データベースなど
    • eラーニングゾーン:eラーニングソリューション、eラーニングコンテンツ、授業・講義配信など
    • 学びNEXT みらいの学びゾーン:プログラミング教材、STEM教育、AI・ロボット、EdTechなど
    • 学校業務支援ゾーン:事務支援・教務システム、校務支援システム、デジタル採点システムなど
    • ICT機器ゾーン:タブレットPC、電子黒板、保管・充電機器、校内LAN・ネットワーク、プロジェクター、書画カメラ、教育用電子機器など
    • セキュリティゾーン:情報漏えい対策、統合認証システム、登下校見守り、情報モラルツールなど
    • 学校施設・サービス展:学校施設ソリューション、教室設備、学校用品、防犯・災害対策、学校向けサービスなど

     

    これらの各ブースで製品のデモやらセミナーやらやっているので、全部見て回れるわけはないほどのボリュームです。ここはもう「縁があれば出合える」と信じて気の向くままに見て回ってもいいでしょう。

     

     


    最新のICT機器から学べること


     

    私はいままでソフトばかり気にしていたので、今回はまず、ICT機器ゾーンにハードを見に行きました。

    入ってすぐのNECさんのブースで、採点支援ソリューションのデモが行われていました。これは、従来通りの紙のテストを効率よく採点・集計できるシステム。スキャンしてエリアを指定することで、クイズ番組の回答のように「問1」だけの答えをクラス分まとめて表示できます。だから、途中まで採点してから「思ったより正答率悪いな~。採点基準を甘くしようかな」などと前に戻ったりすることなく、最初に全部表示させて全員の出来を把握してから採点に入る、ということもできます。また、採点と同時にデータを集計できるので、問題ごとの正答率や間違いの傾向を把握し指導に生かすことができます。

     

    出展者には申し訳ないけど、日本語学校の規模だと値の張るシステムを導入するのはかんたんではありません。でも、最新事例を知って『うちでも工夫できることがあるんじゃないか』と考えることはできる。たとえばいま見たシステムは問題ごとの正答率を指導につなげられると言っていたでしょ。うちは選択式のテストで採点を効率化していて、問題ごとの正答率を出すのは難しくないから、それを指導に生かせないかな、とかね。

     

     

    次にSAKAWAのブースで最新電子黒板のデモを拝見。最近のプロジェクターは、教師の動きで遮られないように黒板の真上にあるそうです。焦点距離も短くて黒板に近いのでびっくりしました。

     

    少し前の電子黒板はズレたり反応が悪かったりしてイライラさせられたけど、いまの電子黒板は正確になりましたね。それに、教師が話した言葉をそのまま文字にして黒板の上に表示させてるけど、あれもずいぶん正確。いまは教師役の人が早口で話してるからエラーもあるけど、日本語教師が話したらほとんどエラーにならないかもしれません。これがあったらどんな授業ができるかな~。わくわくしますね。

     

    日本語の授業で電子黒板を導入したら、どんなことができますか?

     

    まず画像や動画を使った説明ができますよね。あと、文型を教えたあと、練習中はそれを消しておいて、確認するときにまた表示させるとか。黒板が何枚もあるみたいなものだから、いちいち書いたり消したりしなくてもよくて時間の効率がよくなります。

     

    そうかそうか~。ICT機器は高いから、と後回しにしていましたが、見るだけでもいろいろな学びがあるものですね!

     

     


    日本語学習にもICT


     

    サインウェーブ社の作文自動採点システムの画面。間違いの内容が吹き出しで表示される。

    「何からでも学びがある」とはいえ、語学学習の教材は外せません。

    「最新AIで、英語スピーキングのフリースピーチを瞬時に採点・評価」という教材を出しているサインウェーブ社のブースへ。ここでは英語手書き認識採点システムが気になりました。

    これは、学習者が手書きした英作文をデータ化し、単語スペル、文法のチェック・添削を自動で行うもの。間違っている箇所は赤字と下線で示され、何が間違いなのかコメントも出ます。学習者が自分のパソコンやスマホで間違いを修正したうえで作文を提出する、ということもできます。

     

    いまは英語学習用のシステムですが、これの日本語バージョンができたら使ってみたいですか?

     

    そうですね。日本語を学んでいる人は、日本語で勉強や研究をしたり、日本人相手にビジネスをしたりしたいんです。日本語をおぼえるのは第1歩。日本語学校の学生には、その先の日本語を使ったコミュニケーション力、表現力を身につけてもらいたいと思っています。作文も文法や表記の間違いはアプリなどを使って短時間で直してもらって、その先の書きたいことを表現できているか、というところにフォーカスした指導をしたいですよね。

     

    eラーニング大手、デジタル・ナレッジも、AIを使った英語4技能対策のAIツールを紹介。「(AIが)機械的な仕事を引き受けることで 人間の教師は「より本質的な教育」を実施」との言葉に及川先生が大きくうなずいていました。
    インターカルト日本語学校の加藤校長が、eラーニング日本語教材「スーパー・日本語」の紹介のため、自らブースに立たれていました。
    こちらもe-learningの大手NetLearningのブースでは、国際交流基金のみなとについてのセミナーが。
    オンライン入学受付・手続き、学籍管理、就活支援など、外国人留学生支援サービスを行う企業も広いブースを出展していました。

     

     

     


    セミナーで第一人者の話を聞く


     

    EDIXでは業界第一人者によるセミナーも多数行われています。私は下記2講座を聴講しました。

     

    東北大学大学院情報科学研究科メディア情報学講座の堀田龍也教授
    「新学習指導要領に向けてどう動く? 教育情報化の最新動向と実践への期待」

    前半は教育現場でICT機器がどのように使われているのかの紹介、後半は新学習指導要領と大学入試改革について。

    前半は、「ICT機器を使ったからといって学習がいっぺんに変わるというのは幻想。紙もなくなったわけではない。ICT機器の導入で、便利になる、選択肢が増える、ということ。googleもうまく使うためには読解力と判定力が必要だ」とのまとめでした。

    また、最近の若い人はキーボード入力が苦手(小学5年で5.9字/分、中学2年で17.4字/分)ということをふまえ、堀田先生は「音声入力やフリック入力もあるが、まだしばらくはキーボード入力が必要」というご意見でした。

     

     

    国立情報学研究所コンテンツ科学研究系の山田誠二教授
    「人工知能で教育はどう変わるのか?~教育×AIの現状と今後の展望」

    1956年、ダートマス会議において人工知能という学術研究分野が確立してから約60年の歴史をひもときつつ、AIの基本をおさらい。そのうえで、膨大な訓練データを必要とし、やってみないとうまくいくかどうかわからないディープ・ラーニングは万能ではない、というお話。最後に、今後出てくるかもしれないAIのタイプとして、「学生エージェント」という言葉を興味深く聞きました。人間の学習者より学習進度が少しだけ早い学生エージェントが、人間の学習者といっしょに勉強し、学習へのモチベーションを高めてくれるのだそうです。

     

    ところで、まったくの余談ですが、上記セミナーに入るとき、シート番号を書いた紙を渡されました。自由席だと通路側の座席から埋まってしまい、中央の座席はあいているのに立ち見が出たりしますよね。たくさんの来場者が予想されるイベントでは、こうした即席の指定席が便利だと思いました。

     

     


    最後に


     

    今年はいかがでしたか?

     

    昨年に比べ、AIの活用をうたう商品やサービスがぐんと増えた印象です。
    いまの日本語学校の授業は、語彙や文法といったベースに力が置かれていますが、今後はAIなどのICTも活用してベースの部分についてはスピーディーな習得を促し、教員はそのうえの広がりのある教育を目指さないといけないと、私は考えています。だから、毎年EDIXで最新の事例に触れることを楽しみにしていますし、今年もいい刺激を受けました。

     

    勉強になりました。ありがとうございました!

     

     

     

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