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    【連載】ソーシャル・メディアをめぐる冒険〈毎月第4金曜日更新〉

    第8回 日本語教師のためのビデオ会議システム

     

    みなさん、こんにちは。冒険家の村上です。
    ここのところオンラインコミュニティ育成の話を書いてきましたが、その最終的なゴールともいえるのが「テレビ電話」とか「ビデオ会議システム」などと呼ばれている技術です。今日は、なぜこれは最終的なゴールなのか、そしてどんな種類があるのかを中心に書いてみたいと思います。

     

    index

     

     


    ビデオ会議システムの意味


     

    なぜこれがオンラインコミュニティ育成のゴールなのかというと、リアルタイムで顔が見えて話し合えると、実際に同じ場所に来て会うのとほとんど変わらない関係を作ることができるからです。握手やキス、ハグなどのスキンシップを伴うような家族や恋人同士のような関係にはなれませんが、普通の友達になることは充分にできます。一緒にお酒を飲んだり、バカな話をしたりもできます。

    実際、オンラインで何度も話したことのある人と初めて対面したとき「はじめまして」と挨拶する人はいません。気持ちとしては「お久しぶり!」に近いときもありますが、実際には3日前にオンラインで会っていたりすると、それも変で、とても困ります。

    どうしてこういう関係が作れるのかというと、やはり表情や声のトーンなどで、言葉の意味だけではなく「感情」が伝わりやすいからではないかと思います。チャットなどでは絵文字などが使われるようになって、ある程度の感情は伝えやすくはなってきていますが、やはり実際にリアルタイムで見えるのとは違います。この点について、オンラインで物理を教えていらした田原真人さんはご自身のブログの「世界はどのようにしてつながってきたのか」で「リアルで会っていなくても、心が動く」と表現されています。僕が上に書いたように単純に友達になれるというだけでなく、一緒にリスクをとる覚悟ができたりもするのです。

    これは学習者コミュニティ育成の面でも非常に重要ですが、それとは別に日本語教師にとってはもちろん「オンラインで教える」という選択肢としても、こうしたビデオ会議システムについて知っておく必要はあるでしょう。そこで、次項ではさまざまなサービスを日本語教師の視点から比較してみましょう。

    ↓ビデオ会議システムを使った学習者とのやりとりの例↓

     

     


    いろいろなサービス


     

    (1) Zoom

    いまのところ、いちばん勢いがあるのがZoomです。Zoomは僕の愛用しているChromebookという種類のパソコンにはしばらく対応していなかったので最近まで使っていなかったのですが、やってみるとこれはかなりいいです。利点はいろいろなことがありますが、何といってもブレイクアウトという機能が素晴らしいです。これを使うと参加者を小部屋に分けることができるのです。たとえば、日本語教師にとってはオンラインの教室でもペアワークなどができるようになります。もちろん、他のサービスでもそのグループの数だけビデオ会議室を新規に立ち上げれば不可能ではありませんが、Zoomの場合はそれがすべて自動ででき、それぞれの小部屋への割り振りも自動的にすることができます。

    最初の頃は、無料版は40分までしか会議室が開けないので、「無料」という言葉に弱くて有料版を買うつもりのない僕にはそこも気になっていたのですが、何度か使ってみるとそれもまったく問題ないことがわかりました。40分以内に一度会議室を閉じて、1秒後に再開すれば結局ずっと同じ会議室で会話を続けることができるからです。

    欧米の学習者のなかには自分の個人情報をネット企業に提供することに抵抗を感じる人もいますが、Zoomの場合は主催者さえアカウント(無料版でも)を作れば、それ以外の参加者はアカウントを作る必要がないので、個人情報の扱いを巡ってトラブルになる可能性もありません。

    いまのところ、唯一の不満はChromebookという種類のパソコンでは録画ができないことですが、WindowsやMacなどではそうした問題はないようです。

     

    (2) appear.in

    Zoomと同じようにアカウントなしで使えるサービスとしておすすめなのがappear.inです。こちらは主催者すらアカウントが要らないので、学生同士の会話にも安心しておすすめできます。また、パソコンの場合は特にソフトウェアをインストールしなくてもChromeなどの最新のブラウザがあれば使えるというお手軽さもおすすめです。ただし、人数は公式にも8人までで、ネットの回線が細い場合は4人ぐらいから不安定になってしまうことがあります。ですので、1対1のプライベートレッスンや、まだビデオ会議システム自体に慣れていない人に初めて連絡するときなどのエントリーポイントとして使うのがいいかもしれませんね。

     

    (3) Googleハングアウト

    Zoomが現れるまで僕がイチオシしていたのがGoogleハングアウトです。ハングアウトはZoomのように小部屋に別れる機能がないことと、参加するにはGoogleのアカウントが必要なので個人情報をネット企業に提供したくない人たちには使いにくいというデメリットはありますが、他にないメリットもあります。

    たとえば、Google傘下のYoutubeとの連携が簡単で、話し合っている現場をYouTubeLive!を通してライブ中継することができます。ですので、学習発表会やスピーチコンテストなどで不特定多数の人に見てもらいたいときは、非常に便利です。

    また、参加できなかった人に録画を見てもらいたいときは、ハングアウトオンエアーを使えばオンラインで録画できます。録画が終了すると、その時点でもうYouTubeに登録されているので、リアルタイムで参加できなかった人にそのURLを送れば、それで終わりです。Zoomの場合は録画機能はあるのですが、いったん自分のパソコンにダウンロードしてからYouTubeなどにアップロードするというかたちになりますので、参加できなかった人に録画を共有するという点においては、Googleハングアウトのほうがはるかに簡単です。

     

     


    オンラインイベントに参加してみませんか?


     

    さて、こうしたサービスは初めて使うときには何となく敷居が高く感じられるものですが、いったん体験してみると実はそれほど難しいものではないことがわかるでしょう。そのためにも日本語を教えていらっしゃるみなさんがご自身でこうしたビデオ会議システムを使ったオンラインイベントに参加してみることをおすすめします。

    たぶん、日本語教師にとっていちばん参加しやすいのは「世界のみんなと日本語で話そう」というFacebookグループの実施する一連のイベントではないかと思います。ここでは毎月2回ほど定期的にZoomでおしゃべり会を開いています。海外の日本語学習者も多く参加していますので、日本語教師のみなさんが参加するだけでなく、みなさんの学習者に紹介して会話の機会にするのもいいのではないかと思います。

    さて、今回はビデオ会議システムについて書いてきましたが、これは人間同士の関係性を根本的に変える可能性を持っている技術だと思っています。というより、実際に多くの人がビデオ会議システムを通じて多様な人たちとつながり、世界に大きな変化をもたらしています。なかなか一歩を踏み出しにくい人もいらっしゃるようですが、みなさんにとっても大きな世界が広がることになると思いますので、ぜひ体験してみてください。

     

     


    参考資料


     

    世界はどのようにしてつながってきたのか | 田原塾~オンラインで繋がり未来を創る
    http://study-meeting.org/wp/?p=41

    Video Conferencing, Web Conferencing, Webinars, Screen Sharing – Zoom
    https://zoom.us/

    appear.in – one click video conversations
    https://appear.in/

    Google ハングアウト
    https://hangouts.google.com/

    世界のみんなと日本語で話そう
    https://www.facebook.com/groups/earth.nihongo.dialogue/

    むらログ: ハングアウトで広域の遠隔日本語クラスをやってみました。(2013年)
    http://mongolia.seesaa.net/article/316640376.html

    むらログ: 無料で簡単にオンラインコースが開ける時代が来た!(2017年)
    http://mongolia.seesaa.net/article/454266753.html

     

     

    近刊紹介
    SNSで外国語をマスターする方法について筆者がまとめた書籍『冒険家メソッド』(ココ出版)が、近日刊行予定!!

     

    《筆者》村上吉文 冒険家。これまで、国際協力機構(JICA)や国際交流基金からモンゴル、サウジアラビア、ベトナム、エジプト、ハンガリーなどへ派遣されてきた。2017年5月からカナダのアルバータ州教育省に勤務。ブログ「むらログ」(http://mongolia.seesaa.net/)では、日本語教育とICTに関する記事や、教育機関によらず自らの力で日本語を学ぶ「冒険家」たちについてのインタビューを発信している。

     

     

    連載バックナンバー

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第7回「コミュニティを作ろう」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第6回「教師自身の学びのために」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第5回「学習者の安全のために」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第4回「教師自身が使いこなすために必要な第一歩」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第3回「自律性と一斉学習」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第2回「冒険家の実像」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第1回「なぜソーシャル・メディアか」

     

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