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    【連載】センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!?〈毎月第3金曜日更新〉

    夏休み番外編〜大学院に関する質問に答えます〜

    半年間、センパイ方に質問をぶつけてきたひろこさん。先日は自身の大学院説明会でセンパイ役も務めたそうです。そこで夏休み中の今回は、よくある質問やお悩みに説明会風に答えてもらいました。これから大学院進学を考えている方、ぜひ参考にしてみてください。


    中山裕子(なかやま・ひろこ) 大学卒業後、旅行会社の社員を経て日本語教師に。国内の日本語学校や中東のヨルダンで日本語を教えてきた。今年4月から大学院に進学。でも大学院って何をすればいいのか、わからない! そうだ、先輩方に聞いてみよう!

     

    Q1 修士の学位はほしいのですが、大学院で研究したいテーマがありません。


    A1 自分の問題意識から始めるのはどうでしょう。

    この質問、よく聞きます。確かに日本語教師を続けるにあたって、修士を取ったほうがいいのではないかと悩む人は多いと思います。

    藤本センパイの回でもお話ししたとおり、私も「なんとなくICT関係のことを勉強したい」という気持ちで一度受験を考えました。しかしそれだけでは研究計画書まで書けず、受験を一度あきらめています。そしてその後も仕事を続けたり自分で勉強したりするなかで、「日本語を通して人や社会がつながったら豊かな人生、豊かな社会になるのでは?」との想いから、「つながる」「ICT」「豊かな人生」などのキーワードが私のなかで研究したいこととして浮かび、受験して合格しました。アルハムドリッラー(=おかげさまで)。

    とはいえ、私もまだテーマを絞りきれてはおらず、真野センパイのように2年目で突然テーマを変えてしまうことも大いにあり得ます。いま私を支えているのは「こういうことが研究したい!」「これを研究したらきっと人の役に立つと思う!」という気持ちです。

    村上センパイも言っていましたが、問題意識は何かしら持っていたほうがいいと思います。「これをもっと改善したら、解明したら、もっとよくなるんじゃないかな」という想い。その対象も学習者が、教師が、教育機関が、世界が……と、なんでもいいと思いますが、とにかく必要なことだとか有益だとか思える何かを見つけて深めていくと、研究したい内容がだんだん見えてくるのではないでしょうか。

     

     


    Q2 結婚、出産、親の介護など、これからのことを考えると大学院に入っていいものかどうか迷います。


    A2 実際に妊娠中のセンパイや子育て中のセンパイもいます。

    これは女性からよく聞く悩みというかご意見ですね。「大学院にもし入れたとして、そのあとに〇〇(結婚や出産や介護など)があったらやっていけるのだろうか」と悩む気持ちはよくわかります。

    私もイイ年した大人で未婚で定職についておらず、親もこれまたイイ年でまだ元気だけどいつ何が起こるかわからないという状況なので、「もし」を考えると不安は無限大です。でも、私は自分が何事もやってみないとわからない性格だということを知っているし、実際にやってみると意外になんとかなるということを幸か不幸かいままでの人生で経験してしまったので、例に漏れず大学院も勢いで入ってしまいました。不安はいまも解消されたわけではありませんが、実際に入学してみると受験前にあれこれ考えていた不安は軽減されています。

    西谷センパイ(先生)のインタビューに、大学院在学中に出産して子育てをしながら修論を書いたというお話がありましたが、実際に妊娠中のセンパイや子育て中のセンパイもいますし、子育てや介護などすべてが終わって自由の身になったのでこれからは勉強を頑張ります、という方もいらっしゃいます。大学院は学生の年齢も幅広いので、人生のどの段階でも始められると思います。そして一度始めたとしても休んだり辞めたりもできます。戻ることもきっとできると思います(きっと)。

    「大学院でやっていけるかどうか」の答えは私にもありません。でもセンパイたちは「なんとかなる。というかなんとかした」と言っていますので、私もそう思っています。

     

     


    Q3 日本語教師の経験がありません。大学院で研究する前に就職したほうがいいでしょうか。


    A3 経験は役に立つと思いますが、日本語教師として働くことと研究することはだいぶ違うようです。

    はっきりとした答えはわかりません。学部からそのまま大学院に行く、大学院の前に就職する、どちらにもいい点、悪い点があると思います。

    くーみんセンパイも言っていましたが、日本語教師として働くことと研究することは違います。日本語教師をしていた(またはしている)から知っていることやなんとなくわかることもありますが、研究に必要な客観的な証拠や理論はまた別です。ただ、日本語を教えることや日本語を勉強している人たちのことを知るには教師として働くのが一番手っ取り早いので、やって損はないと思います。

    ちなみに私は学部卒業後、日本語教育とは関係のない会社に勤めてから日本語教師に転職し、国内と海外で働いてから大学院に入りました。かなり遠回りをしていますが、どれも経験できてよかったと思っています。日本語教育とは一見関係なさそうな企業での勤務ですが、ビジネス日本語やビジネスマナーを体験できたことは後の仕事につながりました。また個人的には、会社員のいい面と悪い面を知っているので日本語教師が続けられていると思います。日本語教師をしていると「会社員だったらもっといい給料がもらえるのに」と思うことは多々ありますが、会社員がいいことばかりではないことも知っています。どんな経験も無駄にはならないのではないでしょうか。

     

     


    Q4 お金が心配です。


    A4 奨学金や学費の免除制度を調べてみましょう。

    確かに心配ですよね、お金。私も海外で日本語教師をしてから日本で1年、また日本語教師の非常勤をしてしまったので、当然お金に余裕はありませんでした。

    そんなときに日本語教育仲間の1人に大学院の説明会に誘われて一緒に行きました。「でもお金が……」と尻込みする私に友人が「お金はなんとかなるし、なんとかしよう!」と背中を押してくれました。また、周りの友人・知人から、さらにtwitter上で奨学金や学費免除についてアドバイスをもらい調べたところ、世の中には返さなくてもいい奨学金や大学によっては学費免除の制度もあることがわかりました。

    大金を払ってまで大学院に通う価値はあるのか?という点にも悩みました。でもそんなときに父が「勉強に払うお金は無駄じゃない。勉強できること自体に価値がある」と言ってくれたので、勇気を持って大学院に飛び込みました。

    私は実家が都内にあり、養わなくてはいけない家族もいないので呑気に言える面もあります。お金は本当に大事なので不安に思われている方は奨学金や学費の免除制度をくまなく調べることをお勧めします。

     

     


    Q5 大学院を修了したら、日本語教師で食べていけますか?


    A5 劇的なキャリアアップは難しいですが、将来につながるものを掴み取るチャンスはありそうです。

    食べていけるかどうかは正直わかりません。西谷センパイ(先生)が赤裸々に答えてくれましたが、大学院に行ったとしても大きくキャリアアップできるとは言い切れないそうです。もちろん、いい仕事につけた人もいるでしょうけど、いまはもう修士号を持っている日本語教師なんていっぱいいますから、修士号があるだけでなんとかなるとは到底思えません。ただ、修士課程にいる間にいろんな人と出会ったり自分を見つめ直したり研究したり発表したりと、いろんな経験ができるので、そこから将来のキャリアにつながるものを掴み取れるのでは?と考えています。くーみんセンパイも「過程が大事」と言っていたように、修士を取る過程で何をして何ができたのかが大事なのではないでしょうか。

     

    この記事を読んでくださった方の疑問やご意見があれば今後もお答えしますので、ぜひお寄せください。

     

     


     

    この連載のバックナンバー

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    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.4 博士課程のセンパイ

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.3 日本語学校のセンパイ

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    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.1 村上吉文センパイ

     

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