• 日本語教育業界を広げる新しいメディア

    【連載】センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!?〈毎月第3金曜日更新〉

    vol.4 博士課程のセンパイ

    みなさん、こんにちは。ひろこです。
    大学院の授業は課題が多くてヒーヒー言っていますが、毎回新たな発見や衝撃があって楽しいです。でも、自分の研究については未だ何も見えず……。そこで今回は、カケポん(駆け出し日本語教師)時代からの友人、くーみんに突撃インタビューしました!
    研究について、大学院の授業について、センパイ教えてください!!

     

    《センパイ》くーみん氏 
    大学院修士課程を修了後、中国とスペインでの日本語教師経験を経て、4月から博士課程に進学。ひろことはカケポん(駆け出し日本語教師)時に出会ったポッドキャスター仲間。専門はインターネットを使った日本語教育。

    《聞き手》中山裕子(なかやま・ひろこ) 大学卒業後、旅行会社の社員を経て日本語教師に。国内の日本語学校や中東のヨルダンで日本語を教えてきた。今年4月から大学院に進学。でも大学院って何をすればいいのか、わからない! そうだ、先輩方に聞いてみよう!

     


    大学院と教師経験


    くーみん なんか、「カケポん」(ひろこが以前にやっていたPodcast「カケポん かけだし」)思い出しますね。

    ひろこ 確かに、懐かしいよね。楽しかったなあ。あれが楽しかったから、私はいまもインタビューをしちゃうんだと思う。

    くーみん なるほど。じゃ、今日はひろこさんのインタビュアーとしての腕前を拝見させてもらおうかな。

    ひろこ いやいやいや。いままでポッドキャストのインタビュアーをしてきたし、この連載も何回かしているけど、大学院に入って、研究するためのインタビューは全然違うって先生に言われて、いまインタビューの仕方を改めて勉強しているところです……。

    くーみん ああ、確かに。

    ひろこ 楽しいためのインタビューと、研究のためのインタビューと……

    くーみん うんうん、違うんだな。

    ひろこ そうそう。

    くーみん じゃ、このインタビューは?

    ひろこ 楽しいほう。

    くーみん 勉強活かされていないじゃん。

    ひろこ いやまだ勉強中なので……。

     

    ひろこ あらためまして、博士課程ご入学おめでとうございます。

    くーみん ありがとうございます。無事に4月から博士課程後期で研究することになりまして。

    ひろこ でも修士卒業してすぐじゃないよね。

    くーみん すぐじゃないですね。修士を出たのはもう6年前。2011年の3月に出て……。

    ひろこ そんなんか。けっこう前だね。

    くーみん それで9月から4年間中国行って、1年スペイン行って、で、去年帰国して今に至る。

    ひろこ じゃあ帰国してからまだ1年経ってないぐらい?

    くーみん 経ってない、ね。

    ひろこ 修士出てから海外に2ヶ所行くっていうのは、珍しいと思うんだけど。

    くーみん 確かに。周りを見ても海外に1度行って、2〜3年で帰ってきて博士課程に進むって人もいるし、そのまま海外を飛び回る人もいるし、日本語教師をやめる人もいるし。そういう意味では私みたいに海外に6年いて博士課程に戻る人は珍しいかも。

    ひろこ 博士課程に進む人って、修士課程が終わってすぐに進学している人が多いんじゃないの?

    くーみん それまでの経歴にもよるんじゃないのかな。ひろこさんみたいに「修士に入るまでに日本語教師として働いていて経験があるけど勉強し直したい」って人はそのまま博士に行く人もいるけど、私の場合は学部を卒業してすぐに修士に行っちゃったから。

    ひろこ 修士に行った時点では日本語教師としての経験がなかったんだよね。

    くーみん そう。私は修士のとき、なんにもわかってなかったからね。日本語教育のことも研究のことも根本的にわかっていなかったから。

    ひろこ やっぱり教師を経験しないで修士に入ったのは大きい?

    くーみん 一応、学部のときにも日本語教育学の授業とか教育実習とかには行ったけど、それでもわかってなかったかなあ。

    ひろこ じゃあ、教師経験のない修士のときと、教師経験を経たいまの博士と違う?

    くーみん 違うね。その経験の差は私にとって一番大きいと思う。あとは修士を出てから学会を聞きに行ったりして……

    ひろこ 発表もしてたよね。

    くーみん まあ、あれは一緒に発表してくださった方がいたからできたんだけどね。そういう経験を通して、論文の書き方とかどういう手順を踏んで研究するのかっていうことが少しわかってきたのも修士のときとは違うかな。

    ひろこ へー、いいなあ。私は日本語教師の経験はあるけど、アカデミックなことが全然わからない劣等感みたいなものがある。だから授業でも「すみません、論理的裏付けないんですけど、現場経験的にこんな感じです」みたいな発言しかできなくて、そこがもどかしい。

    くーみん 日本語教師として現場で働くことと、研究するときに使う頭もやることも全然別な気がする。研究をしたからって授業が上手くなるわけではないし、授業が上手だからって研究もうまくできるわけではないと思う。

    ひろこ それはわかる。でも、研究も現場を意識しているというか、学会でも「この発表のこういうところが現場で使えますよ」って言っている人が多いよね。だから現場と研究もすごく離れているわけではないと思うんだけど……。

    くーみん 多分、授業はいろんなことを知っていないとダメなんだよね。学生の態度のこととか学生の傾向とか文法の理解とか教え方とか。いろんなことを知った上でパフォーマンスしなくちゃいけない。でも、研究は針の穴のような小さいことを突き詰めていかなくちゃいけない。研究はその小さいところでは私が第一人者なんだ、ってぐらいにならなきゃダメなんだけど、教師をするためにはいろんなことを知って学生に向かっていかなきゃいけない。そのバランスをとるというか、その間を埋めるのが難しい。

    ひろこ なるほど。

     


    大学院の授業について


    ひろこ いやー、でも、大学院に入って「研究や授業ってこんなにたいへんなんだー」ってすごい思う。

    くーみん たいへん? でも楽しいでしょ?

    ひろこ うん、すごく楽しい。ただ、研究ってそもそも自分の主観じゃなくて客観的に証明しなくちゃいけないっていうのが、めんどくさいっていったらそれまでなんだけど、手続きがいっぱいあって、データをとるにしても信頼性とか妥当性とか、たくさん計算しなくちゃいけなかったりとか……。

    くーみん それは計算が嫌いってことなんでしょ。頑張ろう、統計。

    ひろこ はい、まさに統計……。日本語教育の研究をしにきたのになんで計算式を見ているのかしらって時々思う。

    くーみん 大事大事。めっちゃ大事だから、統計。

    いろんな手続き踏まなきゃいけないのはすごく面倒だと思うんですけど、でもそれって自分の考えていることをほかの人にわかってもらうためのものだから。

    ひろこ 私だけのことじゃなくて、みんなにも共通していることですよ、ってことを証明するためなんだよね。

    くーみん そうそう。

    ひろこ じゃあ、別の質問なんですが、修士の授業をどう乗り越えましたか?

    くーみん え、覚えてない……。

    ひろこ 参考にならないんですけど!

    くーみん ちょっと待って、思い出す……。でも、何がたいへん?

    ひろこ 大学院の授業って、基本的に課題を読んで内容をまとめたものを発表したりそれについて議論したりが多いんだけど、発表するためにはたくさんの資料を読んで、まとめて、最終的にそれをまたほかの人に伝えるために自分の中から出さなきゃいけないのがたいへんかな。

    くーみん でも楽しい?

    ひろこ うん、それは楽しい。準備はたいへんだけど、まとめた内容を発表するのも楽しいし、ほかの人が発表した内容を聞いて、しかも学会と違って少人数だから発表した人に直接いろいろ質問できるのが楽しい。

    くーみん 時間的に厳しいってことですか?

    ひろこ うーん、まあ確かにいま仕事もしているから忙しいっていうのもあるし、あと本を読むのに慣れていないので時間が……

    くーみん もうそれは慣れるしかないです(ビシッ)!

    ひろこ ……はい。でも論文の読み方もすごく難しい。この論文は何を目的としてどういう背景で、とか分析するのがわからない。

    くーみん 論文って先行研究があるじゃないですか。あれが土台になって研究ができているんですけど、その先行研究の部分は論文の中にはちょこっとしか書いていないんですよね。

    でも、同じような研究をしている人の論文を何本か読んでいくと、その土台になっている部分がボヤ〜っと見えてくるんで、そこでやっと理解できるようになるかも。

    ひろこ つまり、たくさん読めということですね。

    くーみん そういうことですよ(ビシッ)!

    ひろこ りょ、了解……。

     

     


    大学院を目指す人へ


    ひろこ では、今後大学院を目指す人に向けて何かメッセージをお願いします。

    くーみん なんで研究したいのかっていうのが大事だと思います。学会を見ていて、「目の前の学生をなんとかしたい」っていう気持ちで研究している人が多いじゃないですか。だから教える経験はあったほうがいいと思うんです。

    これは6年前の自分にいえることなんですけど、学部からすぐに修士に入るよりもやっぱり現場の経験があったほうがいいと思います。もちろん学部からすぐ修士も悪くないと思うんですけど、その場合でも学生を見るというかぶつかるという経験はしたほうがいいと思います。博士まで行くとまた話は別かもしれませんが……。

    で、修士は卒業がゴールではなくて、その過程が結構大事だと思うんですよ。たくさん本を読んだり、いろんな人と出会ったり……。日本語教育の修士課程には年齢も経験もいろんな人がいるから面白いし。そうやって自分を見つめ直す時間を楽しめばいいと思います。

    ひろこ 確かにいい経験も知識ももらえる時間だからね。

    くーみん もらえるだけじゃなくて、自分の経験や知識も人にあげられると思うんですよ。

    ひろこ なるほど。

    くーみん そして、修士を出たらぜひ日本語教師になってください。

    ひろこ あ、お願いになっちゃった。

    くーみん いや違うな、うん、まあ日本語教師になってほしいけど、でも日本語教師にならなくても、修士の時間を楽しんでください。ひろこさんもね。

    ひろこ はい、楽しみます! 今日はありがとうございました!


     

    この連載のバックナンバー

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.3 日本語学校のセンパイ

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.2 大学教授のセンパイ《後編》

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.2 大学教授のセンパイ《前編》

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.1 村上吉文センパイ

     

    最近の記事

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第2回「冒険家の実像」

    日本語教師の勉強会を見学vol.2 「実践持ち寄り会」