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    【連載】センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!?〈毎月第3金曜日更新〉

    vol.3 日本語学校のセンパイ

     

    みなさん、こんにちは。ひろこでです。
    いよいよ大学院の授業が始まりました。どの授業に出ても毎回レポートやら発表やらの課題が出されます。毎回! 仕事との両立が危ぶまれるなか、なんと学生自治体の理事にもなってしまいました(NOと言えない日本人)。本当に卒業できるかなあ。心配です。
    さて、今回はツイッターで「誰かインタビューに答えて〜」と投げかけた無茶振りに答えてくれた真野蟻乃典さんにインタビューしました。ツイッターではわかりませんでしたが、実際にお会いすると大学生のような若々しいセンパイでした。
    研究について、今後のキャリアについて、いろいろ教えてください!!

     

    《センパイ》真野蟻乃典(まの・ありのすけ)氏 
    大学院卒業後、地方の日本語学校で常勤として勤務中。主に日本語教育とその関連領域を中心とした各種情報を発信・共有している「ありのす」を主宰(サイトはこちら)。「今年はオンラインでもオフラインでも活動予定です。みなさんぜひ参加してください」

     

    《聞き手》中山裕子(なかやま・ひろこ) 大学卒業後、旅行会社の社員を経て日本語教師に。国内の日本語学校や中東のヨルダンで日本語を教えてきた。4月から大学院に進学。でも大学院って何をすればいいのか、わからない! そうだ、先輩方に聞いてみよう!

     


    学部〜大学院までの流れ


    取材中の様子

    中山 今日はお忙しいなか、お付き合いいただいて、ありがとうございます。

    真野 いえいえ。

    中山 では早速ですが、どのような流れで日本語教育の大学院に入られたかを教えていただけますか。

    真野 大学の学部を出て、そのまま大学院の修士課程に入りました。ちょうど2011年の震災の年に修士に入って、その後2年で卒業して今の学校に就職したので……、いま院に入ったときから数えて6年目ですね。

    中山 いまは日本語学校の常勤講師として働いていらっしゃるんですよね。

    真野 そうです。

    中山 大学院に進んだきっかけは何だったんですか。

    真野 大学の学部に入ったときは、日本語教師という職業があるということも知らなかったんですが、大学に入学してシラバスを見たら「日本語教師養成講座」があって「面白そうだな」、と思ってその授業をとったんです。そこで日本語教育のことを勉強しているうちに、日本語教師になりたい、もっと勉強したい、と思って大学院に入りました。

    中山 その学部時代はどのぐらい勉強するものなんですか。

    真野 副専攻だったので、全部で26単位ぐらいだったと思うのですが、内容としては教授法や文法、外国人子弟の日本語教育や社会文化的なものですとか……。あと私は教育実習もしました。

    中山 なるほど。

     

     

     


    修論のテーマの決定と変更


    中山 大学院に入学する時に修士論文のテーマはもう決めていたんですか。

    真野 決めていました……が……

    中山 が?

    真野 学部の卒業論文で日本語教育にかかわることを少し書いていたんです。

    中山 日本語教育は副専攻だったんですよね? それでも卒論のテーマにしてもいいんですか。

    真野 私は社会学系のゼミだったので、わりとテーマは自由に書けたんです。

    中山 そうなんですね。

    真野 なので、卒論で書いたテーマを引き続き修士でも研究していこうと思って、研究計画書も書いて提出したのですが……

    中山 が……

    真野 最終的に書いた修士論文は全然違う内容になりました。

    中山 ……。それはいつのタイミングで変わったんですか。

    真野 えっと、修士2年目の……

    中山 え!? 2年目ですか!? それはけっこうやばいですね……。

    真野 ええ、けっこうやばいです(笑)。本当によく書いたなと自分でも思います。

    中山 なぜそんな事態になったんですか?

    真野 修士の1年目はもう決めていたテーマで書こうともがいていたんですが、2年目の最初のころに、「これはもう違うな」と思ったんです。というか書きたいものが変わってきてしまったので、無理してこのテーマで書くことはできないし、書いたとしても審査に通らないと思って。

    中山 その書きたいものが変わってきたきっかけは何だったんですか。修士1年目で学んだものに影響されてってことですか。

    真野 そうですね。やっぱり大学院で授業を受けたりゼミでいろんな人に意見をもらったり実習したりするなかで、かなり自分がやりたいことが変わってきたんです。

    中山 (ひょえ〜〜〜〜〜)

    真野 それで、2年目にガラッと変えちゃったんです。

    中山 ガラッとですか!?

    真野 ええ、まあ。根底にあるものは同じなんですが、表面に出てくるものがガラッと変わりました。

    中山 ということは、修士論文はどのぐらいの期間で書いたんですか。

    真野 実質、半年ぐらいだったと思います。

    中山 データも間に合った……んですよね。

    真野 そうですね。何とか。

    中山 2年目でテーマを変えて修士論文を書いてみて、結果として、いまどうですか。

    真野 書いているときは、書くことも内容としてもかなりツラかったんですけど、変えてよかったなと思います。あのとき、あのテーマで書かなかったら、ここまでの人生というか、自分のキャリアが変わってきたと思うので、変えて正解でした。

    中山 テーマをガラッと変えることについて指導教官は反対しなかったんですか。

    真野 「まあ、やってみたら」みたいな感じで言ってくださいました。

    中山 この連載はそもそも私が大学院に入学が決まったものの、何をどうしたらいいのかわからないので先輩にアドバイスをもらおう!という気持ちで始めたのですが、いまのお話で安心できました。

    真野 というと?

    中山 修士2年の途中からテーマを変えても修論が書けるという証明が得られたので!

    真野 (ゴホゴホ)あの、もちろんオススメはしません

    中山 あ、そうですよね。

     

     


    いまの仕事につながっていること


    中山 論文のテーマを変えたからいまのキャリアにつながっている、とおっしゃっていたんですが、現在は日本語学校で常勤講師のお仕事なんですよね。

    真野 はい。

    中山 大学院で学んできたことと、いまのお仕事とどのようにつながっていますか。

    真野 研究成果を直接活かして仕事をしているわけではないですが、学部では日本語について学んで、大学院では日本語の“教育”という部分が中心にあって、そのどちらも学んだことで、教える現場に出たときや、学生や同僚と向き合うときに活きているなと感じます。あのときに習ったあの教授法が役に立っている、とかではないんですが。

    中山 理論がいつでも役に立つわけじゃないってことはわかります。

    大学院にいるときにいまの仕事を想定しながらしていたことってありますか。

    真野 いや、大学院に入ったときは博士課程にいこうと思っていたので。いまでもその気持ちはあります。ただ、学部生のときから大学院までの間にボランティア教室や学習支援や個人レッスンなどいろんなことをやってきたんですけど、職業としての日本語教師をしたことがなかったんです。だから一度現場に出て、いろんな経験をしたり考えたりしてから博士論文に向き合ったほうがいいと思って就職しました。

    中山 就職はどのように決められたんですか。

    真野 海外も考えたんですが、たまたま地元に近いところで求人があったので、出してみたらとっていただけたということで。修了ギリギリで決まりました。

    中山 海外にも興味があるんですか。

    真野 そうですね。ずっと国内の現場に立っているので、海外に行ってみたいという気持ちはあります。

    中山 いま、働き始めてどのぐらい経つんですか。

    真野 4年ぐらいですね。

    中山 現場に4年立ってみて、いかがですか。

    真野 思っていたことと違うな、ということはありますね。

    中山 何が一番違うと思いましたか。

    真野 まず単純にクラスで教えることもたいへんだなと思いました。

    中山 何がたいへんですか。授業準備ですか。

    真野 それはそんなにたいへんではないんですが、どのように教壇に立ったらいいか、教え方というか……。自分がしたことが学生の学びになってしまうので、どのようにしたら学生にとっていい学びになるかを考えるのがたいへんですね。

    中山 いまのところ、どういうことをするのがいい学びになると思いますか。

    真野 それは難しい質問ですね……。学生たちが日本語を勉強してよかったとか楽しかったと思えるのが一番いいと思っています。まあ、学生たちによって考えていることは違うんですが……。

    中山 あ、でもそれわかります。やっぱり楽しいことって大事だと思います。

    真野 もちろん、楽しければいいというわけではないんですが。

    中山 楽だから楽しいではなくて、学んだことで楽しいと思ってもらえたらいいなと私も思います。でも、そういう気持ちがあるとツラくなりませんか。

    真野 確かにテストやってそれだけで評価するほうが楽かもしれませんが、お互い違う人間が同じ教室にいるからいろんなことが起こるわけであって、それを大切にしたいですね。

    中山 お話を聞いていると、真野さんは「人であること」とか「人だからこそできること」に興味があるように感じるんですが。

    真野 そうですね。比較的そうだと思います。人として人とかかわるということを大切にしているというか。日本語という言語だけを教えればいいとはあまり思っていなくて、日本語も含めて人間関係を教えたいというか。

    中山 多分、「教える」「学ぶ」だけの関係じゃなくしたいんですよね。

    真野 そうですね。お互いに成長し合えるというか、互いに考えることが大切だと考えるようになりました。

    中山 そう思うようになったのは現場に立ってからですか。

    真野 大学院では理論としては理解していたのですが、現場に立って、試行錯誤しながらそれに反応する学生たちを見て実感するようになりました。

    中山 そうですか。

     


    これから大学院へ進む人へ


    中山 では、今後のプランというか夢は何ですか。

    真野 いろんな現場を経験したいというのはあります。どこに行きたいという具体的なものはないのですが。学部時代も含めると日本語教育に10年ぐらいかかわってきて、いろんな人と出会って、いろんな経験をしてきたので、これからもいろんな現場にかかわっていきたいなと漠然と考えています。

    中山 これから大学院を目指す人や入学する人に向けてメッセージをいただけますか。

    真野 おそらく修士に入ろうとする人は何らかの問題意識や引っかかるところを持っていると思うんですが、その自分がもやもやとした気持ちを大切にすることが大切なんだと思います。

    中山 もやもやしているのは悪いことではないんですね。

    真野 そのもやもやしたものが修士論文を書くパワーになるので。

    中山 入学前にもやもやを具体的に把握していたほうがいいですか?

    真野 いや、そこまで具体的ではなくてもいいと思うんですが、入学後に変わることもありますし。ただ、何かもやっとしているものを持っていた方がいいと思います。

    中山 わかりました。私ももやもやしておきます今日は長い時間お付き合いいただいて、ありがとうございました!

    真野 こちらこそ、ありがとうございました。

     

     

    この連載のバックナンバー

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.2 大学教授のセンパイ《前編》

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.1 村上吉文センパイ

     

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