• 日本語教育業界を広げる新しいメディア

    「もっと学びたい」「教師として成長したい」という向上心が旺盛な日本語教師たちが集まる勉強会・研究会に参加し、その様子をレポートします。第1回は、開催情報が公開されて数時間で満員となるほど人気の勉強会「サタラボ」にお邪魔してきました。


    情報アップから数時間で満員御礼
    人気の勉強会「サタラボ」とは


    プライベートレッスンや企業研修を提供するフリーランスの日本語教師として、28のキャリアを持つ小山暁子先生。日本語を教えるだけでなく、日本語教師対象セミナーの講師や記事の執筆など多方面で引っ張りだこです。「サタラボ」は、そんな小山先生が主催する勉強会。ある機関で行ったセミナー後に「もっと聞きたい」というリクエストをもらい、自身で勉強会を開催したことから始まりました。第1回は2014年5月。現在は奇数月の第2土曜日に定時開催し、さらに希望者が多ければ偶数月の土曜日に同内容の「レビュー」が開催されています。

    「最初は人に言われて思いつきで始めたサタラボですが、2017年1月でvol.27、同内容のレビューを合わせると通算50回を越えました。 続けてきたのは、みなさんに喜んでいただけると嬉しいから。セミナーというよりコミュニティになっていて、たとえば懇親会では、悩みを相談した参加者に対し、励ます人や解決のヒントをあげる人がいたりする。そういう交流を見るとやめられないですよね」と小山先生。

    小山暁子先生
    小山暁子先生。先生呼び禁止のサタラボでは「あきこさん」と呼ばれている

    最初の3回は小山先生自身が講師でしたが、以降は小山先生がプロデュースし、外部の講師を招いてワークショップ形式で行っています。そのテーマ設定や内容は、事前に小山先生が講師と何回も打ち合わせして練り込むという緻密さで、サイボウズというグループウェア(メンバーが情報を共有するためのソフトウェア)で申込の受付を開始すると、その日のうちに満員となってしまうほどの人気ぶりなんです。

     


    短時間で自分を印象づける
    30秒自己紹介


    「そんな人気の勉強会を見てみたい!」と、2017年1月の第2土曜日、「サタラボvol.27 これでスッキリ!BJTビジネス日本語能力テスト」にお邪魔してきました。会場は東京駅近くの貸し会議室。名古屋や関西など地方からの参加者もいるので、東京駅近くでの開催にこだわっているそうです。会場には、6~7人のテーブルが6台。各席にトランプのカードが置かれていました。知り合い同士で座らないように、引いたカードで席が決まるシステムになっています。

    席決め
    トランプのカードをひいて席を決める

     

    9:00 スタート

    まず、小山先生がサタラボを説明。参加者全員がフラットに意見を言い合えるよう、「『~先生』という呼び方はしない」「主体的に学ぶ」「競合ではなく協同(協働)、GIVE&GIVEの精神で」などのルールが紹介されました。

    会場全景
    40人近い参加者で会場はいっぱいに

    次に、参加者全員が各30秒で自己紹介を行います。これは「エレベーターピッチ」と呼ばれるもので、シリコンバレーの若くお金のないIT起業家が、エレベーターで乗り合わせた投資家に30秒ほどで自己PRし、資金援助のきっかけをつくる手法。フリーランスが新規顧客を獲得するために、また日本語教育機関での面接対策として、限られた時間で印象的な自己紹介をする練習となっています。日本語を教えるときに、学生の自己紹介として活用している人もいるとか。

    サタラボでは、毎回エレベーターピッチにお題があります。今回は「ビジネス日本語と言われたら、これは必ず教えたい」。これがかなりおもしろかったんです。
    ・報連相。思い込みで動かないこと
    ・日本人が失礼だと感じる行動・会話
    ・上級話者であれば、雑談力、親しみを感じさせるくだけた言葉づかい
    ・宴会に役立つ歌
    ・マンガ『島耕作』を読ませる
    などなど。「確かにそれは教えたい!」「そんな見方もあるのか~」とメモをとりまくり、このアイスブレイクだけですでに勉強になってしまいました。 この30秒が参加者の授業のヒントになっているそうです。

    エレベーターピッチ
    30秒で自己紹介する「エレベーターピッチ」

     

    9:50 セミナー

    ここからが本番。「中上級者のビジネスパーソンに教えることになったら、まずはBJTから」という小山先生が、昨夏から同協会にかけあって実現させたBJTについてのセミナーです。BJTの主催団体である(公財)日本漢字能力検定協会・海外事業部の辻本朝美さんが講師として登壇。

    1. 留学生の就職状況
    2. 日本企業が求める日本語能力とは
    3. BJTとは
    4. サンプル問題紹介

    と、プレゼンテーションしてくださり、今年4月からCBT方式(Computer Based Testing)に移行する件も含めてよく理解することができました。

    セミナー
    BJTについて解説する辻本朝美さん

     


    初対面の人たちと協力して
    問題作成のワークショップ


    10:55 グループワーク

    と、こうしたセミナーで終わらないのが、サタラボ最大の特徴。毎回、必ずワークショップがあり、ほかで行われている新刊説明会などとは一線を画しています。
    今回の課題は「BJTの問題をつくってみましょう」。テーブルごとにBJTの問題をつくりました。私がいたテーブルでは、ビジネスメールが難しいという話から、メール文を使った読解問題をつくることに。企業勤めの経験がある男性が「実際にビジネスで送られてくるメールは、内容が整理されているとは限らない」と、あえておかしな順番のメール文を書き、長く日本語教師をしている参加者が「学習者が短時間で読むには難しすぎるのでは?」と修正を加えて、リアルな日本語と、問題としてふさわしい日本語の兼ね合いを図っていきました。いろいろな人が参加している面白さを感じました。

    グループワーク1
    グループワーク2テーブルごとに話し合い、作成したサンプル問題を模造紙に書き込んでいく

     

    11:35 発表

    最後に、グループごとに作成したサンプル問題を発表。読解のほか、聴解、イラスト付きの聴解、聴読解など、さまざまなタイプの問題がつくられていました。サタラボルール「問題点の指摘ではなく、改善案を提示する」に則って意見出し。「そもそもBJTでそれってアリなの?」という疑問には、講師の辻本さんが答えていました。

    発表の様子

     


    懇親会やサイボウズで
    セミナー以外の交流も


    以上で今回の見学は終了。その後、毎回行われているという懇親会へ。ここで、いつもは1人でがんばっているフリーランス同士や、違う日本語学校に勤めている人とも交流できるのも、サタラボの魅力のひとつとなっています。

    お菓子
    テーブルにはお菓子が。休憩中の会話も弾む

    懇親会で今回の感想を聞いてみると…
    ・BJTのことがよくわかった。N1のあとの目標として活用したい。
    ・がんばればBJTのような問題もつくれると自信になった。今後、つくってみたい。
    ・主催団体の人に直接質問ができてよかった。
    また、サタラボの魅力については、
    ・同じ職場の人とは、本気で意見を出し合うことは難しい、年下の先生に意見を言ってもらえない、といったことがあるが、サタラボならさまざまな立場の人とフラットに意見を出し合える。
    ・興味のあるテーマはもちろん、一見自分に関係ないと思ったテーマでも、参加すると視野が広がり勉強になる。
    などのアツい想いを聞くことができました。

    サイボウズ画面
    ネット上のグループウェア、サイボウズ。参加後は、 ここで情報発信・情報交換。開催情報や求人情報のチェック、講師への質問、実践した結果のシェアなどができる

    ちなみに、これまでのテーマ(一部)はこんな感じ。
    ・アナログ日本語教師にもできた!スカイプレッスンの始め方(2014年10月)
    ・外国人の就活~決め手は対話力~(2015年11月)
    ・今年こそパーソナル・ブランディングを!(2016年1月)
    ・ビジネスの目をもち、日経新聞の使い方を考えよう!(2016年7月)
    今後の開催情報が知りたい方は、satalabo1@gmail.comへお問い合わせください。

     

    サタラボ
    ・開催日:奇数月の第2土曜日 9:00~12:00 *同内容レビューを希望者10名以上で偶数月に開催 *セミナー後ランチ懇親会(希望者のみ)
    ・会場:東京都内・貸会議室
    ・対象者:日本語教師 or 日本語教育に携わる方
    ・参加費:3000円(キャンセル料はかからないが、キャンセルの場合は必ずメールにて連絡のこと)
    ・サイボウズで先行予約を告知。外部への告知は「こくちーず」から

     

    サタラボin京都 開催決定! 
    (公財)日本漢字能力検定協会共催『これで安心!! ビジネスジャパニーズを教えよう』
    日時:3月4日(土)9:30~18:00
    会場:(公財)日本漢字能力検定協会本部(京都市東山区祇園町南側551番地)
    詳細はこちら→サタラボin京都

     

    執筆者
    平井美里
    ライターとして9年働いた後、青年海外協力隊の日本語教師隊員として、2年間、某国の大学で日本語を教えた経験をもつ。現在は当ウェブマガジンのコンテンツ充実に向け奮闘中。

     

    関連記事

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.2 大学教授のセンパイ《前編》

    日本語議連 第五回総会レポート

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? Vol.1 村上吉文センパイ

    研究者じゃないけど、学会に行ってみた(2016年度日本語教育学会秋季大会レポート)