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    【連載】ソーシャル・メディアをめぐる冒険〈毎月第4金曜日更新〉

    第18回 Zoomでの勉強会に参加しよう

     

    「日本語教育いどばた」の読者のみなさんこんにちは。
    エドモントンは9月12日に初雪が降って、もうすっかり冬モードです。

    さてこれまで2回にわたって、 YouTube Live と Google フォームを使ってイベントを中継したり、審査に協力してもらったりする方法をご紹介してきました。続きまして今回はお互いに顔が見える状況でのオンラインイベントにゲストとして参加する方法をご紹介したいと思います。もちろんこうしたオンラインイベントをホストできるようになるともっと素晴らしい機会が広がってくるのですが、ゲストとして参加するのは今ではとても簡単になっているので、まずは敷居の低いほうから体験していただきたいと思います。

    今回ご紹介したいのは Zoom Cloud Meeting というビデオ会議システムです。 これについてはほぼ1年前、連載の第8回でごく簡単に主な機能をご紹介したことがありますが、今回は操作面を中心にご紹介したいと思います。

    といってもズームでゲストとしてビデオ会議に参加するのは、とても簡単です。以下に順番に説明してみましょう。

     

    index

     

     


    必要なもの


     

    パソコン、タブレット、 スマホなどの本体

    連載第8回目の記事でZoomについてご紹介したときは、まだ OS によってはかなり制限があったのですが、2018年の時点では、 Windowsやアップルなどの製品以外でも、Chromebook や Android などのタブレットやスマートフォンでもほとんどの機能が利用できます。

     

    インターネットへのアクセス

    ズームは最大100人が同時にビデオ会議に参加することができますが、その割にはインターネット回線への負担はあまり大きくありません。これは「サムネイル」という小さい画像で参加者の顔が表示されているときは、解像度が低く、従ってデータ量が少ない動画が配信されているからです。Zoomには「スピーカービュー」といって発言している人の顔が大きく表示される視聴方法もあるのですが、この場合は発言している人の顔だけが高画質になるように設計されています。公式サイトによると、最大でも1.5mbpsの回線速度さえあれば十分で、東京の非常に混んでいるスターバックスのかなり遅めの回線でも、僕はZoomでの会議に特に支障なく参加することができました。総務省の資料では2015年の段階で30mbps以上のブロードバンドに加入している世帯の割合が日本では99.98%を超えているということですから、日本の一般の教育機関やご家庭内のインターネット回線なら、1.5mps以下であることはほとんどないものと思います。

     

    ヘッドホンかイヤホン

    ヘッドホンかイヤホンが必要なのは、相手の話を聞くときにスピーカーを通して聞く状況になっていると、そのスピーカーから出た音をマイクが拾ってしまい、循環してしまうからです。これは一般的に「ハウリング」といわれていて、非常に耳障りです。しかし、2か月前の記事で書いたような、スピーチコンテストを一方的に配信するような場合は、視聴者が音声でフィードバックをすることはありませんので、ヘッドホンやイヤホンはなくてもまったく問題はありません

     

    カメラ

    カメラもないよりはあったほうがいいのですが、実際のビデオ会議では音声だけの参加者という人もそれほど珍しいというわけではありません。また、勉強会やセミナーなどをZoomで配信する場合は、発表者の顔よりも、プレゼンテーションのスライドなどを配信したほうがいい場合も少なくありません。その場合はそのパソコンの画面を共有するという機能がありますので、それを使えばカメラは必要ありません。
    また、カメラを用意する場合は、ビデオ撮影の業者が使うような高機能なものは必要ありません。むしろ高画質すぎると回線に負担がかかってしまって、「コマ落ち」と呼ばれる、動きのカクカクした映像になってしまいますので、パソコンに最初から内蔵されている物などで十分でしょう。内蔵されていないパソコンをお使いの場合は、2000円程度で販売されている「ウェブカメラ」という種類のものをご用意ください。繰り返しますが何万円もするデジタルカメラなどは必要ありません。

     

    マイク

    マイクも普通は内蔵されているもので十分ですが、ノイズの多い場所ではヘッドホンかイヤホンに付属していて口元で声を拾うことができるもののほうが望ましいです。勉強会やスピーチコンテストのライブ配信などの広い会場で使うときは、「ピンマイク」とか「クリップマイク」などという種類の小型のマイクを使うこともありますが、1000円や2000円のものでもかなり明瞭に音を拾うことができます。しかし、 一般的なオフィスや自宅からアクセスする場合はパソコンやタブレットに内蔵されているマイクでまったく問題ありません

     

     


    実際の操作


     

    ゲストとしてZoomに参加するには、パソコンとスマホやアプリなどで操作方法が違います。パソコンの場合は、基本的にホストから送られてきたリンクを開くだけですが、念のために順を追ってみると、以下のとおりです。

    • ホストから送られてきたリンクを開く
    • 自動的にダウンロードされるプログラムをクリックしてインストールする(ここで少し時間がかかることがありますが、2回目以降はこの手続は必要ありません)
    • 他の参加者に表示するための自分の名前を入力する
    • 「コンピューターでオーディオに参加」というボタンをクリックする

    これだけでZoomに参加することができます。アカウントを作ったりパスワードを入れたりしなくてもいいところが、スカイプやGoogleハングアウトとは大きく違うところですね。

    スマホやタブレットの場合はまず最初にアプリをインストールする必要があります。以下の Web ページからダウンロードすることができます。

    iPhone,iPad:https://itunes.apple.com/ca/app/zoom-cloud-meetings/id546505307
    Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=us.zoom.videomeetings

    Zoomに参加するときはこのアプリを開いた後で「会議室 ID」という9桁か10桁の数字を入力します。会議室 ID はメールに含まれているリンクの最後の数字の部分で、例えばホストから送られてきたリンクが「https://zoom.us/j/606343629」だったら、会議室 ID は最後の「606343629」の部分です。 スマホやタブレットでも、パソコンで参加するときと同じように、他の参加者に表示する自分の名前を入力すればすぐに会議に参加できます。

     

     


    参加できる勉強会


     

    こうしてオンラインで勉強会に参加できるようになると、日本語教師としての成長の機会は飛躍的に多くなります。いまのところ僕が個人的にイチオシでおすすめしているのは、「著者と読む読書会『日本語教師のためのCEFR』」という毎週火曜日に行われている勉強会です。 この原稿を書いている時点では、まだ第2回目の勉強会が開かれただけですが、日本時間で毎週火曜日の午後9時からZoomで開催されています。ヨーロッパに関心がない人でも、この本ではここ数年海外で注目されている行動中心アプローチに基づいた日本語の教え方を知ることができるので、日本に住んでいる人にもおすすめです。
    これ以外にも、国際交流基金は、トロント日本文化センターブダペスト日本文化センターメキシコ日本文化センターニューデリー日本文化センターなどで定期的にZoomを利用した勉強会が開かれています。 民間の団体もこうした勉強会の開催に非常に積極的で、「オンライン日本語教師学び場」というFacebookのグループも毎月定期的にZoomで勉強会を開いています。 今後開かれる日本語教育関係のオンラインの勉強会などは、Twitterで「#日本語教育ウェビナー」というハッシュタグをつけて共有されています。いまのところ僕が中心に投稿していますが、Twitterでの共有はどなたでもできますので、こうしたオンラインの勉強会の情報をご存じの方は積極的にご共有ください。

     

     


    配信のホストは主催者でなくてもいい


     

    この記事ではこれまで、あくまでもゲストとしてZoomに参加する方法についてご紹介してきました。これには実はひとつの理由があります。というのも、日本語教師向けの勉強会などで、主催者に「ライブ中継はありますか」と質問すると、「スタッフが足りないので無理です」と断られてしまうことが非常によくあるからです。

    確かに、 Skype やGoogleハングアウトやZoomでオンラインイベントをホストするのはちょっと面倒くさいです。しかし、インターネットの時代には、そうした勉強会などを中継するホストが現場にいなければならないということはまったくないのです。 もちろん勉強会の主催者などは現場で様々な問題を解決しなければならないでしょうから、現場にいる必要はあるでしょう。しかし、主催者が同時に現場から中継をホストする必要はありません。ホストとしてオンライン側の設定などをするのは、地球の裏側にいてもできるのですから。例えば、この連載の16回目の記事でも簡単に触れましたが、海外日本語教育学会のライブ中継のホストは、その現場にいないことがほとんどです。

    僕だけでなく、オンライン以外で日本語教師の勉強会などに参加する機会がほとんどない海外や地方の在住者にとって、勉強会の主催者がオンライン配信してくれるかどうかは死活的に重要な問題です。 その一方で、そうした勉強会を主催する立場の人は基本的に大都市の住人で、日常的にこうした勉強会などに参加する機会にあふれているので、地方や海外在住者にとってどれほどこうしたライブ配信が死活的なのかにまったく気づいていません。この断絶は絶望的なほど深いので、時には以下のような意見が表明されることもあります。

     

     

    実は、ビデオ会議システムが簡単に低価格でできるようになってきたのは、ここ数年のことで、たとえば2009年に発売されたポリコムの83万円のシステムはそのあまりに低価格な設定に関係者はみんな驚いたものでした。しかし、83万円の投資は勉強会などを主催する学会などにとっては大きな負担で、遠隔地の参加者がそれを視聴するのも手続きや設定が大変でした。この当時はライブ中継の優先度が低かったのは無理もありません。地方在住者などの参加を諦めても、現地で参加できる人限定でもっとよいコンテンツを提供する方向にスタッフの労力を注力するのは当然のことだったでしょう。

    しかし、時代は変わりました。もし、外部でZoomをホストしてくれる人がいれば、現場の主催者は、原則的にカメラとマイクのあるパソコンを開いて、ホストが送ってくれたリンクをクリックするだけで中継できるのです。現在では「スタッフが足りない」とか「作業負担がかかる」というのは、ライブ中継しない理由として海外や地方の在住者を納得させることはできなくなっています

    今回の記事が、こうした勉強会や研究会などのライブ配信などにつながってくれることを期待しております。

     

     


    参考資料


     

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第8回「日本語教師のためのビデオ会議システム」 – 日本語教育いどばた
    http://www.idobata.online/?p=688

    著者と読む読書会『日本語教師のためのCEFR』
    https://www.facebook.com/groups/473957919695294/?fb_dtsg_ag=AdxUNUy1P9DTYIi–0j8WtssQ_mhLjBoS5a4c0fNFM9Kow%3AAdynWGJveOFNi1r16ciy-noEdpDMNmcHBfb8a6r9YGV-RA

     

     

    近刊紹介
    SNSで外国語をマスターする方法について筆者がまとめた書籍『もう学校も先生もいらない!? SNSで外国語をマスターする《冒険家メソッド》』(ココ出版)がついに発売!!

     

    《筆者》村上吉文 冒険家。これまで、国際協力機構(JICA)や国際交流基金からモンゴル、サウジアラビア、ベトナム、エジプト、ハンガリーなどへ派遣されてきた。2017年5月からカナダのアルバータ州教育省に勤務。ブログ「むらログ」(http://mongolia.seesaa.net/)では、日本語教育とICTに関する記事や、教育機関によらず自らの力で日本語を学ぶ「冒険家」たちについてのインタビューを発信している。

     

     

     

    連載バックナンバー

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第17回 ネットの向こうから審査してもらおう

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第16回 スピーチコンテストのライブ中継

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第15回 指導例「Twitterで著名人にお祝いを通して好意を伝えることができる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第14回 指導例「イベントに招待できる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第13回 指導例「写真に簡単なキャプションをつけることができる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第12回 指導例「新しいメンバーを歓迎できる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第11回 指導例「コミュニティで自己紹介を書くことができる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第10回 指導例「160文字以内でTwitterのプロフィールを書く」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第9回「行動中心アプローチとTwitter」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第8回「日本語教師のためのビデオ会議システム」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第7回「コミュニティを作ろう」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第6回「教師自身の学びのために」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第5回「学習者の安全のために」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第4回「教師自身が使いこなすために必要な第一歩」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第3回「自律性と一斉学習」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第2回「冒険家の実像」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第1回「なぜソーシャル・メディアか」

     

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