• 日本語教育業界を広げる新しいメディア

     

    【連載】ソーシャル・メディアをめぐる冒険〈毎月第4金曜日更新〉

    第16回 スピーチコンテストのライブ中継

     

    冒険家のみなさん、こんにちは。
    僕はおとといカナダから帰ってきたところですが、日本の暑さに本当に驚いています。

    さて、この連載では今まで6回にわたって、通常の授業でどのようにソーシャル・メディアを利用するかを紹介してきました。とりあえずパターンなどはご理解いただけたのではないかと思いますので、ここからは通常の授業ではなく、交流型のイベントを通してどのようにソーシャル・メディアを利用するかをご説明したいと思います。

    ソーシャル・メディアを利用したオンラインの交流にもいろいろなパターンがありますが、おそらくみなさんがいつもよく目にするのはスピーチコンテストの中継ではないでしょうか。そこで今回はまず日本語スピーチコンテストの中継について書いてみたいと思います。

     

    index

     

     


    日本語スピーチコンテストのライブ中継の歴史


     

    スピーチコンテストのライブ中継が盛んになる前に、録画が YouTube などで公開されている例はいくつもありました。例えば2008年に僕の勤めていたハノイのベトナム日本人材協力センターで開催された「ハノイ日本語まつりスピーチコンテスト」では、出場者一人ひとりのスピーチが個別の動画として記録されており、多いものでは現時点で再生回数が4,308回にも登っています。

    こうした日本語スピーチコンテストが録画ではなくライブ中継で共有されたのは、僕の知る限り2010年3月28日のヨーク大学における第21回全カナダ日本語弁論大会のライブ配信が初めてです。これは残念ながら僕の環境では動画を再生することはできないのですが、もしかしたら環境によっては見ることができるかもしれません。詳しくは参考資料の部分をご覧ください。 2010年というと、もうすでにライブ配信サービスの USTREAM が注目を浴びていた時期ですが、ヨーク大学によるライブ配信はこうしたプラットフォームを利用せず、直接大学のサーバーから配信を行ったようです。

    実は僕はこのカナダ日本語弁論大会のライブ配信についてまったく知らなかったので、その半年後、2010年10月24日にアンカラで行われた第19回アンカラ日本語弁論大会の配信に関わったときには、これが史上初の日本語弁論大会のライブ中継だと思っていました。このときのライブ中継では、当時はライブ配信サービスとして最も有名だった Ustream が利用されました。このときは2194人の方がライブ配信を視聴しました。

    その後、僕が関わっただけでも、ヨルダン、モロッコ、ベトナムなどで日本語スピーチコンテストがライブ中継されました。

    残念なことに Ustream はその後サービスが有料化してしまい、さらに IBMに買収されてブランド自体が消滅することになってしまいましたが、ライブ配信サービスはその後も別の企業が参入しており、日本ではニコニコ生放送が有名ですし、グローバルなサービスとしては YouTubeLiveが多く利用されています。

    最近では、例えば昨年7月29日に今治市で行われた第22回海外高校生による日本語スピーチコンテストは YouTube Live で配信され、 その再生回数は現時点で3612回になっています。この中継は今治市のケーブルテレビ局が協力したようで、高機能なカメラが利用されたり、司会者もプロの人を呼んでいるように見受けられます。

     

     


    ライブ中継の方法


     

    ライブ中継の方法にはいくつもあります。スマホの公式アプリでも数回画面をタップするだけでライブ配信ができます。ただし今回ご紹介しているような日本語スピーチコンテストのライブ中継に関しましては、事前にライブ配信ページを準備しておくことが広報上も望ましいでしょうから、ここではそれが可能な方法をご紹介したいと思います。

    といってもやり方はそれほど難しくありません。順番に見てみましょう。

    まず最初にライブイベントを準備するページに行きます。
    https://www.youtube.com/my_live_events

    スマートフォンやタブレットでは操作が違うと思いますが、パソコンでは、右上の「新しいライブイベント」をクリックします。

    そうすると次のような画面が開かれます。ここでタイトルと日時、詳細などを入力します。 詳細の下に記入してある「日本語教育」「日本語スピーチコンテスト」などのフレーズは「タグ」と呼ばれていて、このタグによって、他の似たような動画を見ている視聴者におすすめとして表示されるために必要です。

    右側の「公開」の部分は共有範囲の設定で、多くの人に見てもらいたい場合はこのままにしておけばいいのですが、招待客だけに見てもらいたい場合は「限定公開」にしておくといいでしょう。なお、「非公開」にしてしまうと、その YouTube アカウントの管理人にしか見ることができなくなってしまいます。外部には非公開にして、あくまでも録画するためだけに YouTube ライブを使う場合は「非公開」に設定するといいのですが、そうでない場合は「公開」か「限定公開」にしておくといいでしょう。

    もう一つ注意しなければいけないことは、 右下にある「種類」の部分です。先ほど今治の例で紹介したようなプロのケーブルテレビ局などが中継する場合は下の「カスタム」を選べばいいのですが、 特にそうした専門的なスキルや機材を持っていない一般的な日本語教育関係者の場合は、上の「クイック」を選ぶといいでしょう。そして右上の「予定を作成」を選べば、ライブ中継ページが完成して、自動的に最初にご紹介したライブイベントのページ(https://www.youtube.com/my_live_events)に戻ります。

     

     


    広報の準備


     

    多くの人に見てもらうためには、まずこのライブイベントのページに表示されているスピーチコンテストのイベントの画像をクリックします。タイトルなどではなくて、画像をクリックすることに注意してください。他の部分をクリックしてしまうと、このイベントのタイトルや詳細などを編集するための画面に飛んでしまいます。

    さて、上記の画像の部分をクリックすると、みなさんが YouTube の動画を見るときの見慣れたレイアウトのページが表示されるものと思います。 ただし、動画の再生ボタンがなく、「〜日後にライブ配信」というメッセージが表示されているはずです。 このページの URL は、一般的な動画の再生ページと同じように「https://www.youtube.com/watch?v=」の後にランダムな英数字が並んでいるのではないかと思います。これがライブ配信を試聴するための URL になりますので、コピーして Twitter や Facebook でシェアするなり、見てほしい人にメールで送るなりしてください。

     

     


    当日の操作


     

    当日配信を始めるには、先ほどのライブイベントのページに行きます。(https://www.youtube.com/my_live_events) 広報に利用した視聴者が見るためのページではないのでご注意ください。ここで 「ハングアウトオンエアを開始」をクリックします。クリックすると画面の中央下部に「10%」などという数字が表示され、それが100%になるまでは中継を始めることができません。 100%になったら同じ場所に「配信を開始」という緑色のアイコンが表示されますから、それをクリックすると数秒後にはライブ動画が配信されるようになります。カメラやマイクが複数接続されている場合は、画面上部の歯車のアイコンから設定することができます。

    配信中は、視聴者が配信を視聴しているページ(「https://www.youtube.com/watch?v=」の後にランダムな英数字が並んでいるURLのページ)で、右側のチャットボックスに視聴者からのコメントや質問などが投稿できますから、視聴者からのフィードバックを求める場合は、ここで積極的に視聴者に対してコメントを求めたり、あるいは視聴者がそこで自己紹介をしてくれるように求めたりすることが望ましいでしょう。

    なお、スピーチコンテストの会場では出場者の名前やスピーチのタイトルなどが書かれたパンフレットが配布されることが多いですが、こうした文字情報はオンラインの視聴者にとっても大変重要です。なぜなら 、タイトルは日本語であることが多いため聞けば分かるのですが、発表者の名前は一般的な日本人にとっては耳に馴染みがないので、会場で司会者などが名前を紹介していても、聞き取ることができないことがよくあるのです。そのため中継の担当者がこのチャットボックスに発表者の名前やスピーチのタイトルなどを投稿し、他の視聴者に適切なタイミングで情報を提供する例が多く見られます。

    さて、こうした作業を考えると、配信の担当者は会場ではなく別の場所で別のインターネット接続を使って作業をすることが望ましいです。なぜなら、ごくたまに会場からの中継が切れてしまうことなどもあるのですが、そのときに中継担当者が別の場所にいると、視聴者に対して適切な情報を提供することができるからです。一方で、中継担当者が会場にいて、同じインターネット接続を使っていると、回線が切れてしまったときに視聴者に対して情報提供できる人が誰もいなくなってしまいます。 例えば海外日本語教育学会のライブ中継なども、多くの場合、中継担当者は別の場所にいて、ライブ配信の開始や、コメントなどへの対応を行い、会場では別のスタッフがカメラの設置などを行うようになっています。

    さて、今月はソーシャル・メディアを利用した日本語教育関係のイベントとして、日本語スピーチコンテストのライブ配信をご紹介しました。この文だけを読んでみると難しく思えるかもしれませんが、やってみればそれほど難しいことではありません。ぜひみなさんも日本語学習者の声を、こうしたライブ配信を通じて他の地域に住んでいる日本語学習者や、日本語教育とは縁のない日本人に届けてあげてください。出場者にとっても忘れられない思い出になるのではないかと思います。

     


    参考文献


     

    ハノイ日本語まつりスピーチコンテスト – YouTube
    https://www.youtube.com/watch?v=gQzpZn5ygwI

    第21回全カナダ日本語弁論大会開催要領
    http://buna.yorku.ca/njsc/njsc21_2010_guide_jp.pdf

    むらログ: 日本語スピーチコンテストの動画ライブ配信について
    http://mongolia.seesaa.net/article/375542518.html

    むらログ: 史上初? 海外の日本語弁論大会をustreamで実況中継!
    http://mongolia.seesaa.net/article/165352301.html

    ニコニコ生放送
    live.nicovideo.jp/

    第22回海外高校生による日本語スピーチコンテスト
    日時:平成29年7月29日(土)
    https://www.youtube.com/watch?v=No-HMAcq7XM

    むらログ: 日本語弁論大会のオンライン中継に関する話。
    http://mongolia.seesaa.net/article/251209401.html

    ヨーク大学による世界初かもしれない日本語弁論大会のライブ配信
    Japanese Speech Contest, March 28, 2010 : http://msl.stream.yorku.ca/mediasite/Viewer/Viewers/Viewer320TL.aspx?mode=Default&peid=c1563598-03c1-46ac-aded-9943bd6ac729&pid=ce714a04-5602-4e98-8f53-b130ef0c9bff&playerType=undefined
    編集注)現在は見られないようです。

     

    近刊紹介
    SNSで外国語をマスターする方法について筆者がまとめた書籍『冒険家メソッド』(ココ出版)が、近日刊行予定!!

     

    《筆者》村上吉文 冒険家。これまで、国際協力機構(JICA)や国際交流基金からモンゴル、サウジアラビア、ベトナム、エジプト、ハンガリーなどへ派遣されてきた。2017年5月からカナダのアルバータ州教育省に勤務。ブログ「むらログ」(http://mongolia.seesaa.net/)では、日本語教育とICTに関する記事や、教育機関によらず自らの力で日本語を学ぶ「冒険家」たちについてのインタビューを発信している。

     

     

     

    スピーチコンテスト関連記事

    日本語スピーチコンテスト必勝指導法 笈川幸司先生インタビュー

     

    連載バックナンバー

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第15回 指導例「Twitterで著名人にお祝いを通して好意を伝えることができる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第14回 指導例「イベントに招待できる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第13回 指導例「写真に簡単なキャプションをつけることができる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第12回 指導例「新しいメンバーを歓迎できる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第11回 指導例「コミュニティで自己紹介を書くことができる」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第10回「160文字以内でTwitterのプロフィールを書く」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第9回「行動中心アプローチとTwitter」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第8回「日本語教師のためのビデオ会議システム」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第7回「コミュニティを作ろう」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第6回「教師自身の学びのために」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第5回「学習者の安全のために」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第4回「教師自身が使いこなすために必要な第一歩」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第3回「自律性と一斉学習」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第2回「冒険家の実像」

    ソーシャル・メディアをめぐる冒険 第1回「なぜソーシャル・メディアか」

     

    最近の記事

    AIの進化と日本語教師の役割-今井新悟先生インタビュー3/3

    AIの進化と日本語教師の役割-今井新悟先生インタビュー2/3

    AIの進化と日本語教師の役割-今井新悟先生インタビュー1/3

    教育×ICTの展示会に日本語学校の先生と行ってみた

    センパイ! 大学院って何をすればいいんですか!? 最終回 大学院進学を悩むコーハイ

    日本語教師の勉強会を見学 vol.4 日本語教員LT会